左上:海がきれいになれば、海の生き物たちも徐々に戻ってきます。アサリなどを採取する人の姿も、増えてくることでしょう。
右上:横浜市金沢区の沖は小柴沖と呼ばれ、シャコやアナゴの漁場です。また、海岸近くでは近海で採れたワカメの天日干しもしています。
左:鎌倉時代から漁を営んでいたとの記録も残る八景島の近くにある柴漁港。
赤いインクを垂らしたように、海面が赤く染まることがあります。赤潮といわれる現象で、水中の窒素やリンの増加によって海が富栄養化し、プランクトンが異常繁殖することが原因です。その結果、水中の酸素が少なくなったり、魚介類のエラにプランクトンが詰まるなどします。赤潮の色は、この異常繁殖したプランクトンの色素のためです。また、プランクトンによっては毒を持つものもいて、赤潮の発生は魚介類に大きな被害をもたらします。
異常繁殖したプランクトンが死んで海底に沈殿すると、バクテリアによって分解されますが、その時に周辺の酸素が消費され、貧酸素水塊がつくられます。貧酸素水塊には硫化水素が含まれているので、表層に浮き上がって空気中の酸素と反応して青色に見えます。これが青潮です。貧酸素水塊は海底の土砂を採取したときに出来る大きな窪みなどのあるところに出来やすくなります。
東京湾へ流入するCODや窒素、リンといった汚濁負荷量は年々削減しています。年間の赤潮の発生回数は平成17年度(2005年度)が46件で、平成18年度(2006年度)以降は30件程度となっています。それでも、窒素、リンをもっと減らさなければ、きれいな海を取り戻すことはできません。
青潮の発生件数は主に千葉県の西岸で年間1~6件程でしたが、近年は横浜市沿岸や羽田沖でも発生し、二枚貝漁場に被害を与えています。
左:千葉県姉ケ崎で見られた赤潮(出典:海上保安庁ホームページ)
右:千葉県稲毛で見られた青潮(出典:海上保安庁ホームページ)
赤潮や青潮が発生するのは閉鎖性水域である東京湾の富栄養化が大きな原因です。流入するCODの量は年々減少しているとはいえ、湾内の低層部におけるDO(溶存酸素量)の値はあまり改善されていません。その理由は陸側からの生活排水の流入などが大きな原因とされています。さらに低層の泥などに溜まった窒素やリンといった栄養塩類が海中へ溶け出していることも原因とされています。
汚れてしまった海を、元のように美しく豊かな海として取り戻すには、海が持っている自然の浄化能力を高めるようにすることと同時に、海の汚れの原因となるCODや窒素、リンなどを陸から流さないようにすることです。