東京湾再生

水の話 No.167 特集 東京湾再生 東京湾の里海づくり

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自然の海の復元に貢献する浄化槽

コンテナを満載した大型貨物船が、湾の奥へと向かっています。 その船の前方にも後方にも、そして横にも大小様々な船が航行しています。
東京湾は1日約600~800隻の船が就航しています。
遥か彼方には通称キリンと呼ばれるガントリークレーンがいくつも並んでいます。自然海岸は見当たりません。

海との係わりの中で暮らしてきた人々

 里海という言葉の響きからは、どこか懐かしく、砂浜や磯、松林などの広がる風景を連想する人が多いようです。東京湾の内湾といわれる部分の多くは埋め立てられ、自然のままの海岸線はほとんど残されていません。大小様々な干潟もありますが、そのうちの約半数は人工的に造成したものです。その東京湾で、多くの自治体や市民団体が里海づくりに取り組んでいます。
 里海は自然の状態のままの海のことではありません。人々は海と係わりながら暮らしてきました。魚介類や海藻、塩といった生活に必要な海産物を採取してきたのはもちろん、海藻は肥料として農産物を育てることにも使われました。釣りやマリンスポーツや遊覧船など、レジャーの場として楽しむ人も増えています。海は人々の日々の営みの延長線上にあって暮らしを支える場なのです。

お台場の海浜公園からは品川埠頭に並ぶいくつものガントリークレーンが見えます。お台場も品川埠頭ももともとは埋立地です。

海が甦れば多くの生き物が戻ってくる

 環境省は里海を「人の手が加わることによって生物生産性と生物多様性が高くなった沿岸海域」と定義しています。埋立てやコンクリートの護岸で固められた海は、自然が持つ浄化作用が大きく損なわれています。さらに埋立地などへ工場や事業場がつくられることで、人は容易に海に近づけなくなっています。海から遠ざけられることで、人々の海への関心も薄れていきます。
 海の浄化に大きな役割を果たしているのが干潟や藻場と呼ばれている浅場です。代表的な藻場として知られているものにアマモ場があります。アマモは種子で増える海草で、比較的浅い場所に生育します。

横須賀市の走水海岸では、今ではすっかり少なくなった天然のアマモが繁茂しています。

 干潟には多くの二枚貝やゴカイのような底生生物がいて、川を通して陸から流れ込む有機物をエサにして分解します。藻場も窒素やリンを吸収する一方で酸素を供給します。さらに魚介類が産卵、生育をする大切な場所にもなっています。
 人が手を加えることで、親しみやすい海辺環境をつくり出そうというのが里海づくりです。干潟や藻場を再生しようという取り組みは東京湾でもおこなわれています。海が健全さを取り戻すことで、その海域にすんでいた生き物たちは再び数を増やすことが出来るようになります。そればかりか生き物の種類も豊富になってきます。
 沿岸海域は生き物たちとって、とても重要な場所なのです。そのような沿岸海域の水が汚れることは、生き物たちの生育環境を壊すことになってしまいます。つまり里海づくりとは健全な沿岸海域をつくり出すことなのです。

左:横浜市の野島海岸は横浜に唯一存在する自然海岸です。わずか500m程の干潟ですが東京湾では貴重な干潟です。
右:横浜・海の公園は横浜市内で唯一の海水浴ができ、潮干狩りも楽しめる砂浜です。ただし自然の砂浜ではなく、人工の砂浜です。

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