それからひと月後の休みの日、おじいちゃんの家へ遊びに行きました。
「しばらく見ないうちに大きくなったな」とホースを手にしたままおじいちゃんはうれしそうにいいました。おじいちゃんは、畑に水をまくために出かけようとしていたところです。
「昔は畑の近くに湧き水があって、それを汲んでまいていたけど、いまは水道のおかげでずいぶん楽になった。もっとも湧き水はそのまま飲むこともできたし、夏は冷たくておいしかった」
いま、その湧き水のあったところには、家が建っています。
湧き水があったのは、そこに森があったからだとおじいちゃんはいいました。森は、降った雨をたくわえ、少しずつ地下に浸み込ませていくのです。だから大雨が降っても洪水を防ぐ役目もします。しかも、地下へ水が浸み込むとき、余分な汚れを取り除いてくれるのです。地下の温度は1年を通してほぼ一定しているので、湧き水は夏は冷たく、冬は温かく感じるのだそうです。
そういえば、森が水をきれいにする仕組は、前に見学した浄水場の仕組とよく似ているな、と思いました。
酸性雨って知ってるね。工場の煙や自動車の排気ガスが雨に溶けて、酸性になることだね。ひどい場合は、レモンの汁と同じくらいの酸性になった雨が降ることもあるんだ。日本でも、森が枯れるといって、問題になっているね。酸性になっているのかどうかを調べるときに使われるのがpH(ペーハー、またはピーエイチと読みます)で、pH7より数字が小さくなるほど酸性が強くなり、pH5.6より数字が小さくなったとき、酸性雨と呼んでいるんだ。ところで、ブナの森には酸性雨の酸を弱くする働きがあるらしいんだ。森のもっている力って、すごいね。