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水はきれいな方がいいと誰しもが思っています。上流から下流まで、清流のままの流れが青く透き通った海に注ぐ風景を目のあたりにしたならば、人はきっと感動を覚えるでしょう。そこに白鳥の飛来する汽水湖があったならば、やはり青く澄んだ湖の風景を期待するかもしれません。しかし、汽水湖は必ずしも美しい水とは限りません。 |
汽水域の漁獲高では一番のシジミ |
汽水域の代表的な水産物にシジミがあります。日本の漁業のうち、シジミは内水面漁業の漁獲高の約38%を占め、汽水湖だけでみると約80%も占めているのです。なぜそれほど多くのシジミが汽水湖では獲れるのでしょうか。
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宍道湖ではシジミ漁が盛んです。長い棹の先に付けられた鉄製のかごで湖底を引っ掻くようにしてシジミをとります。こうした漁は、一面では湖底をかき回すことになり、酸素を供給するのに役立っているともいわれています。また、シラウオをはじめ、たくさんの種類の魚もすんでいます。 |
魚は大きく淡水魚と海水魚に分けられますが、多少の塩分変化に対してはかなりの適応力を備えています。宍道湖程度の塩分(1.8‰)なら、普通の淡水魚は生きられます。逆に中海程度の塩分(25~30‰)なら、海水魚にとっては許容範囲です。しかも塩分濃度が変化したとき、魚は自分の体に適した水域へ移動することも可能です。
一方、シジミは自分の力ではほとんど移動することができません。生まれ落ちた場所に豊富なエサがあれば、その場所で一生を過ごすといってもいいかも知れません。宍道湖にどのくらいのシジミがいるかといえば、1平方m当たり3,800個以上、最高では6,000個以上という調査結果もでています。それだけ湖に栄養分がたくさん含まれているということです。栄養分が豊富だということは有機物がそれだけ多いということです。
シジミのようなベントス(底生生物)は自分であまり長い距離を動き回ることができません。そのため塩分に対する耐性を強めています。成長したシジミは真水に近い場所から海水に近い場所までかなり広い範囲で生きることができます。ところが、そんなシジミにも大きな弱点があります。卵です。卵には塩分耐性がないのです。そのため、約5‰の塩分濃度のときを見計らって産卵をします。宍道湖ではそれが5~7月頃にあたります。
塩分耐性の強いベントスはそれほど多くはありません。そこで汽水域の環境に一度適応してしまうと、エサを独占できるため、同じ種類の生物が爆発的に増えるのです。そのため汽水域にはシジミが多いのです。
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