水の話
 
生産力と浄化力の大きな水域

CO2を一時的に固定するヘドロ
シジミ 日本のシジミには汽水域にすむヤマトシジミ、ヒルギシジミと、淡水にすむマシジミ、セタシジミがいます。宍道湖のシジミはヤマトシジミです。ヤマトシジミは雌雄があり産卵をしますが、川にすむマシジミは雌雄同体で卵ではなく稚貝の形で生まれます。川は流れがあるため、卵で生むと流される危険があるからです。

汽水域は基本的に窒素やリンなどによって富栄養状態となりやすいため、植物プランクトンがたくさん発生します。植物プランクトンは動物プランクトンのエサとなり、それを魚が捕食するといった具合に食物連鎖が形成されます。ところが食物プランクトンがそのまま死ねば湖底に沈み堆積します。このままの状態が続くとやがてヘドロとなってしまいます。言葉を代えれば有機物を未分解のまま閉じ込めたものがヘドロいうことです。このヘドロもバクテリアなどによって、最終的にはCO2と水とに分解されますが、ヘドロは地球温暖化で問題となっているCO2を一時的に固定する役目も持っていることになるのです。つまり、汽水湖や河口といった汽水域における有機物生産量(基礎生産量)は単位面積に直すと熱帯雨林に等しいともいわれています。

ところで、バクテリアなどによってヘドロが分解されるとき、酸素が大量に消費され、ヘドロ表面の酸素がなくなります。汽水湖は塩分躍層ができやすいため、底の方の無酸素となった水は簡単には入れ替わりません。つまり、生き物のすめない状態となってしまうのです。ところが、シジミは植物プランクトンを直接エサとします。有機物を直接回収することは、ヘドロを効果的に回収するのと同じことになっているのです。しかもシジミはエサを獲るとき、水を吸い込み、濾しとります。ちょうどフィルターと同じ働きとなり水をきれいにするのです。宍道湖の全シジミ量から計算すると、なんと3日で宍道湖の水すべてを入れ替えるのに等しくなるというのです。結果的にシジミ漁は湖の汚れを外へ運び出すことにもつながるのです。


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