水の話
 
日本の文化を作り上げてきた針葉樹
日本の文化は木の文化だといわれます。たしかに住まいや家具、道具など、様々なところに木が利用されてきました。使われる木の種類も豊富です。そうした木の文化を作り上げるときによく利用されてきたのが針葉樹です。中でもスギやヒノキは最もよく使われてきた木材です。

フィトンチッド効果に優れた針葉樹
 総桧造りの家といえば高級住宅の代名詞のようになっています。桧造りの風呂も現代ではもはや憧れとなっています。ヒノキが建築用材として様々なものに使われてきたのは、丈夫で腐食に強く耐久性があるからです。しかしそれだけではありません。ヒノキの家や風呂はいい香りがします。これは良い香りの成分が含まれているからです。

 ヒノキに含まれているのはカジネン、ヒバの場合はヒノキチオールという成分です。ヒノキの家には蚊などの虫が寄り付きにくいといわれるのも、この成分のおかげです。ヒノキばかりでなく多くの木はいろいろな成分をもっていて、森林へ入ったとき、すがすがしい気分にさせてくれるのです。これはフィトンチッドといわれるものです。フィトンチッドとは「植物」と「殺す」という2つの言葉の合成語で、植物が放出する他の生物を殺す働きをもった物質のことです。フィトンチッドには様々な物質がありますが、代表的なものは、森林の中へ入ったときに漂っているすがすがしい木の香り、テルペンです。フィトンチッドが他の生物を殺すといっても、殺すのは主にカビや細菌などの微生物です。

さらにフィトンチッドには人間の健康によい様々な効果があることも分かっています。神経を刺激して体の働きを活発にしたり、疲れやストレスを取り除く働きをもっているのです。
散歩

森 森の中に入ったときにすがすがしい気分にさせてくれるフィトンチッドの量は、季節や時間によってかなり変わります。夏は冬に比べ5~10倍の量にもなります。時間的には正午近い午前中にフィトンチッドの量が最も多くなります。また、雨の日は、晴れた日の10分の1~50分の1にまで減少します。

さまざまな針葉樹の効用
 森林は人々の暮らしにとって非常に多くの働きをしてくれます。例えば音を吸収する効果、とくに4,000ヘルツ以上の不快な高周波を吸収しやすいとされています。大気中の汚染物質も吸着、吸収するため、空気をきれいにします。また、心身に良いとされるマイナスイオンを発生します。天然のダムとして水を蓄える効果ももっています。しっかりと張った根は土砂崩れを防いでくれます。いま、地球温暖化で問題となっている二酸化炭素も、木は光合成によって吸収します。しかし、十分に成長した林では、光合成によって二酸化炭素を吸収する量と呼吸や落ち葉などの分解によって排出する二酸化炭素の量は等しくなってしまいます。森さえあれば二酸化炭素をどんどん吸収してくれるというわけではないのです。二酸化炭素の吸収という面から見れば、針葉樹林は広葉樹林よりも効果的なようです。というのも、同じ面積ならば、針葉樹の方が何倍もたくさんの木を植えることができるからです。針葉樹の植栽と適切な手入れは、二酸化炭素増大の抑制効果を大きくするともいえるのです。


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