水の話
 
風呂をもっと楽しむ薬湯

手軽な町の温泉としての銭湯
 わざわざ温泉まで出かけなくても、銭湯でも手軽に温泉気分は味わえます。手桶に石鹸とタオルを入れ、「ゆ」と書かれたのれんを潜るとき、ちょっとした緊張感が湧いてきます。見ず知らずの人の前で裸になることへの抵抗感があるからでしょうか。そんな町のお風呂屋さんが、昭和30年代後半から40年頃を境に、しだいに姿を消しています。いま、銭湯の愛好者は50歳代以上の人に多いようです。家に風呂があっても、週に1度は銭湯に通う人もいます。お湯がふんだんに使えるということも銭湯の魅力の一つとなっているようです。家庭の風呂では、家族の順番などで入浴時間が制限されますが、銭湯なら気にする必要もありません。湯から上がり、脱衣場でくつろぐひと時も、心をリフレッシュさせてくれる貴重な時間のようです。

ところで、銭湯といえども、江戸時代には、決して湯がふんだんに使えるわけではありませんでした。現在の日本人は、世界でも類を見ないほどの風呂好きな民族とされていますが、風呂にいつでも自由に入れるようになったのは、水がふんだんに使えるようになったからです。また、最近は清潔好きな人が増えているせいか、銭湯の湯の汚れ具合は、昔に比べて少なくなっているようです。
「唐風破」の入り口
のれん
「唐風破」の入り口や、「ゆ」とだけ描かれた「のれん」は銭湯のシンボルでした。いまもこうした風情のある銭湯が広く市民に愛されています。 (くるわ湯)

湯だけでも落ちる身体の汚れ
 きれい好きな人が増えていますが、風呂で毎日身体を洗うのは、肌のためには逆効果となる場合もあるので注意が必要です。例えば、油で汚れた手は、水だけで洗ってもなかなかきれいには落ちません。しかし、お湯で洗えばかなりきれいに油は取れます。つまり、お湯の中に入るだけで、身体から染み出た油汚れは、かなりきれいに落ちるのです。身体の油分は肌を乾燥から守る役割をしています。そのため、石鹸で洗うと、かえって肌を乾燥させることにもなってしまいかねません。さらに、入浴剤の主成分である重曹は、それ自体にも油を取りやすい性質があります。石鹸などで身体を洗うのは、普通の人ならば、1日置き位の方がいいようです。もちろん、風呂の排水による生活排水の汚れもそれだけ少なくなってきます。
 また、たっぷりの湯につかるということも、健康面から考えるとあまりいいとはいえないようです。とくに小さな子供を、長時間肩までつからせるのはよくありません。水圧によって心臓に負担をかけてしまうからです。おへその当たりまでつかるだけで温浴効果は十分得られるのです。気分をリラックスしたいときは、なるべくぬる目の湯の方が効果的ともいわれています。入浴時間は、途中で身体を洗う時間を除き、合計10分位がいいようです。

お湯を上手に使って風呂を楽しむのは、健康面からも、水を大切にする面からもこれからはますます重要となってきます。
銭湯外観


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