どこの植物園へ出かけても、温室がひとつの目玉となっています。温室の中には、熱帯の珍しい植物や果物が実っています。当然、中は蒸さるような暑気と湿度で満たされています。温室の役目は、植物が育つのに適した環境を作り出すことです。そうすることによって、植物が育つ本来の時期をずらして育てることも可能になってきます。
野菜や果物のハウス栽培も、温度の調節によって出荷の時期を調整し、商品としての価値を高めるために利用されています。発芽や開花時期をずらすには、必ずしも温度の調節だけではなく、日照時間も関係します。愛知県渥美半島の電照菊栽培は日没後もハウスの中を電灯で明るく照らし、開花時期を変えています。菊は日照時間が短くなると開花します。その性質を利用して、日没後もハウスの中を電灯の明りで照らし、正月などの出荷時期に開花するよう、日照時間で調節しているのです。また、最近は山菜の王者といわれるタラノメの人工栽培も行われていますが、これは短く切ったタラノキを冷蔵庫の中に入れて冬のような状態を作り出してからハウスなどに移し替え、人工的に発芽させるのです。
|
|
愛知県渥美半島の電照菊栽培。菊は日照時間が短くなると開花します。夏の終り頃から日没後も電灯で照らし、正月に出荷できるようにします。(写真提供:愛知県赤羽根町) |
|