最近は、養液栽培と記されている野菜や果物を店先で見かけます。
養液栽培は、水耕栽培とも呼ばれて、従来のように土に頼ることなく、作物を育てています。
根元に土が付いていないので、消費者にも喜ばれているようです。
植物の養分の研究から始まった養液栽培
小学校の理科で、ヒヤシンスやチューリップの球根を水の入った器に乗せ、その水だけで花を咲かせる実験が行われています。これを「水耕栽培」と呼んでいます。これらの植物は、球根の中に発芽から開花までを自給できる養分を含んでいるので、水だけで成長するのです。しかし、すべての植物が水だけで成長して花や実をつけるというわけにはいきません。
最近はイチゴ、トマト、ミツバなどさまざまな作物が「水耕栽培」されていますが、もちろん水だけで育てられているわけではありません。必要な養分を必要に応じて与えて栽培しているのです。これを正確には「養液栽培」と呼んでいます。雨水などによって養液の濃度や成分が変化しないよう、ハウスで管理されるのが普通です。
養液栽培は、もともとは植物がどんな栄養を必要としているのかを研究するために始められました。やがて、農業のできない場所で作物を生産する方法として、研究が行われるようになってきました。
養液栽培では、作物を作る棚の高さが自由に変えられます。棚と棚の間に移動式の作業台を置くことによって、収穫時の作業性も向上します。
従来は土の管理が農業の基本
日本で作物を供給する目的で養液栽培が行われ始めたのは、昭和20年8月以降のことです。当時、日本に駐留していたアメリカ軍は、畑に肥料として人糞をまく光景を見て驚きました。衛生的な野菜を供給しようということで、アメリカ軍によって大規模な養液栽培の農場が作られました。
養液栽培というのは、土を使わずに、植物の生育に必要な養分を水に溶かして与えるという方法です。土に含まれる成分は地域によって異なります。土そのものの性質にも違いがあるため、土を知らなければ、いい作物を作ることはできなかったのです。従来の農業は土をいかに管理するかが重要でした。そこで、農業から土を取り除けば作物の栽培がはるかに容易となるはずです。
養液栽培といっても、植物の根を養液だけにさらす方法や養液に浸した培地に根を張らす方法などがあります。その方法によって、湛液水耕、礫耕(れきこう)、砂耕、ロックウール耕などがあります。礫とはいわゆる石で、ロックウールとは岩石や鉱さい(スラグ)を高熱で溶かして繊維状にして、それを成型したものです。培地にはこの他にモミガラ、木炭、ヤシがらの繊維、木材の小片などがあります。
養液栽培された作物としてよく見かけるのがミツバです。根元に白いスポンジが付いたまま売られているものもあります。これは、浅いプールのようなところに、小さな穴を開けた発泡スチロールの板を浮かせ、種の付いた小さなスポンジをその中へ入れるのです。露地では年に2~3回しか収穫できませんが、養液栽培なら10回位まで収穫が可能になります。根元に土が付かないため、簡単な水洗いだけで調理ができて便利です。
養液を与えるには、穴の開いたパイプを通して培地に少しずつ垂らしていく方法や、浅いプール状になった所へ養液を少しずつ流していく方法、タンクに溜めた養液を循環させる方法などがあります。
温室で栽培すると、植物の盛んな光合成のため、二酸化炭素が不足する場合もあります。そのため、規模の大きなところは液化炭酸ガスで二酸化炭素を補給しています(写真・左のタンク)。養液も大きなタンク(写真・右のタンク)の中で成分や濃度を調整しています。
密閉されたハウス内では、風や自然の昆虫の力によって交配させることができません。そのため、花粉を集めるハチなどをハウス内で放ち、交配させます。(サンフレッシュ海津)
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