水の話
 
季節を失くした野菜や果物

有機肥料も水も使いすぎれば環境に害
肥料
家畜の排泄物を原料にした厩肥も有機肥料の代表的なものですが、化学肥料の普及などにより、肥料としての利用価値を低下させてしまいました。
 有機肥料で作られた作物は安全でおいしく、栄養も豊富だといわれています。実は、有機肥料であっても多量に投入すると、作物の養分バランスを壊して、うまく生育させないばかりか、地下水の汚染原因などを引き起こすことにもなりかねません。豚舎や牛舎などの排泄物が引き起こす畜産公害も、大量の有機物が原因となっているのです。かつてはどこの農家でも、労働力として使える数頭の牛や馬などを飼っていました。家畜の排泄物は厩肥(きゅうひ)を作る原料に使われました。ところが、食肉の消費が伸びると、畜産を専門とする農家は分離し、規模を拡大していきます。一方、化学肥料の普及は家畜の排泄物の肥料としての利用を低下させていきます。さらに栄養化の高い飼料が外国から輸入されると、家畜の排泄物を肥料として利用してきた牧草地が不要になってきました。こうして利用されなくなった家畜の排泄物が、きちんと処理されないまま地下水や河川に流れ込むことで、畜産公害を引き起こしてしまうのです。
水も、必要だからといって与えすぎると、とんでもない害が生ずることがあります。イスラエルのような乾燥した砂漠地帯では、灌漑(かんがい)をしなければ農業は成り立ちません。ところが、たんに水をやるだけだと、水が地中の塩類を溶かし、しかも激しい蒸発のため、その塩類を土の毛細管現象によって地表まで運んでしまい、塩類障害が発生します。ハウス栽培では雨が降らないため、作物に吸収されなかった肥料が、土の中に蓄積して塩害を起すことがあります。

植物は無機の形で養分を吸収
キュウリ ハウス栽培だからといって、肥料や水やりに特別な方法があるわけではありません。水に関しては、ホースをハウスの中へ伸ばして根元へかけたり、穴のあいたパイプを引きます。このようにして蛇口の操作だけで作物に水をかけることができます。あらかじめ水の中へ肥料を溶かしておけば、施肥も同時に行えます。また、有機肥料を使うか化学肥料を使うかは、生産農家の考え方によって異なります。
そうした中で、堆肥がごみのリサイクルにもつながり、肥料としての効能にも優れているとして見直されています。また、有機肥料は安全だといっても、多量に施すと、化学肥料の多肥と同じように、地下水の硝酸態窒素汚染を引き起こしかねません。窒素の一部は硝化菌の働きによって硝酸イオンに変えられますが、窒素を必要以上に投入すると、多量の硝酸イオンが生じ、それが地下水などに溶け込んでしまうのです。これが人の体内に取り入れられると血液中のヘモグロビンと反応し、酸素を運ばなくなってしまうのです。有機栽培だからといって必ずしも万全ではないのです。
植物が養分として吸収するのは有機物ではなく、あくまでも無機の形となったものです。結果的には、どちらを与えても植物にとっては同じことなのです。ただ、生産性を高めるために化学肥料を多量に与えると、土が本来もっていた保水機能を損い、微生物の生息に適さない性質に変わってしまいます。その結果として病害虫の発生につながり、農薬の多使用にもなってしまうのです。逆に、化学肥料の使用を一切止めてしまうと、世界の食糧生産が3分の1は減少するとさえいわれています。化学肥料も有機肥料とうまく組み合わせて使うことが大切です。
トマト
土耕栽培にも、露地とハウス内とがあります。キュウリやトマトはいまではハウス内での栽培が主流となっています。(岐阜県海津町)

露地栽培と温室栽培の収穫量の比較
トマト、キュウリ、ピーマンの収穫量は、露地に比べハウスの方が多くなっています。ところが、ハウスでの栽培面積を露地栽培面積と比べると、トマト55.3%、キュウリ41.2%、ピーマン38.3%と低くなっています。このことからも、ハウスでの単位面積当たりの収穫量が多いことがわかります。また、メロン、イチゴはほぼ100%がハウス栽培です。


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