北陸地方にある大野市は日本海型気候に属し、梅雨時と冬の降雪時の2回、降水のピークがあります。年間降水量は2,600ミリと全国平均を1,000ミリ近くも上回り、それが地下水を潤しているのです。雨や雪が降れば、地下の水位も上昇するはずです。事実、これまでの地下水位の観測結果から、雨が降った半日から1日後に、地下水位は数センチの上昇が見られます。ところが、地下水位の変動には、他の要素も関係しているのです。
地下の水位が上昇をはじめるのは、雪が融けはじめる2月の末、そして4月下旬頃から急激に上昇し、5月上旬から中旬にかけて最初のピークを迎えます。その後いったんは低下を示しますが6月から7月にかけての梅雨時に再び大きく上昇し、8月中旬に1年での最高位を記録します。9月に入ると一気に低下し、11月下旬から12月初めに最低水位を記録し、その後、緩やかに上昇しますが、本格的に雪が降る1月から2月にかけて、再び低下します。こうした地下水位の変動をよく見ると、水田への水張りや落水にも左右されていることが分かります。5月上旬から中旬にかけての最初のピークは、ちょうど田植えが終わる頃と符合し、9月の低下は水田から水を落とす時期に符合します。
豊富な湧き水で有名な大野市ですが、実は昭和40年ごろから、湧き水の量が減少したり枯渇する現象が現われたのです。理由は工場用水や融雪用に地下水を大量に汲み上げたことに加え、圃場(ほじょう)整備などによって用排水路がコンクリート三面張りになるなど、地下へ浸透する水の量が減ったためでした。そこで市は地下水を灌養している地域の水田を冬場の間は借り上げて水を張ったり、レキ層まで掘り下げた池を作るなどして水が地下へ浸透しやすい環境を整備しています。こうした一環として、ブナの森の買い上げも行なったのです。
|
|
|
大野市では、水を落とした冬場の4か月間、約10ヘクタールの田んぼを市が借り上げて水を張り、水田湛水を行っています。これにより、1日約5,000トンの地下浸透量があると考えられています。
(写真提供:大野市) |
|