水の話
 
見直される用水の価値

4つの方針で用水を保全
 用水保全条例には用水景観、開きょ化、清流確保、用水利用の4つの基本方針があります。用水景観は新しい価値の創造というべきものかもしれません。江戸時代であれば用水の流れる風景は当たり前なものとして、景観として意識することはなかったのかもしれませんが、現代では貴重な市民共通の財産です。武家屋敷の横を流れる大野庄用水は、金沢市を代表する景観の一つに数えられ、季節になれば飛び交うホタルの姿を見ることもできます。
開きょ化も都市の合理化、効率化を追い求め過ぎた反省からきた新しい価値の見直しだといえそうです。これまでは道が狭いことが都市としての発展を妨げる要因と考えられてきました。たしかに市の中心部は駐車スペースが少ないため、用水の上を駐車場として利用せざるを得ない面もありました。しかし金沢市のように、道の狭さにも歴史を感じさせるところでは、そこにメリットを見つけ出すこともできるのです。


開きょ化によってまちを活性化
 金沢市を代表する繁華街の香林坊を流れる鞍月用水は最初に開きょ化が行なわれた用水です。鞍月用水は1960年代頃から暗きょ化が進みました。用水の上に蓋をかぶせるようにして駐車場がつくられていったのです。それもほとんど隙間なく蓋がかぶせられていました。しかしいまでは住居や店鋪へ出入りするために必要最低限のスペースを除いて蓋は撤去され、用水が少しでも多く見られるようになっています。それも単に撤去しただけではなく、護岸は石積みできれいに整備され、出入りするためのスペースは欄干のデザインにも配慮した橋になりました。駐車スペースがなくなることで、商売に影響が出るのではないかと心配する声もありましたが、むしろ開きょ化によって潤いのある空間が形づくられ、訪問者が増えて商店街の活性化にもつながったのです。いまでは用水のほとりの道は「せせらぎ通り」と呼ばれ、金沢市の観光スポットの一つにもなっています。
せせらぎ通りの少し上流に鞍月用水と辰巳用水の合流する柿木畠と呼ばれる場所があります。ここにはポケットパークも設けられ、地図を広げてひと休みをする観光客の姿も見られます。

香林坊 鞍月用水
金沢市の繁華街「香林坊」を流れる鞍月用水。以前は蓋がかぶせられて駐車場として使われていましたが、現在は開きょ化されています。(写真提供:金沢市都市政策局)

鞍月用水
せせらぎ通りの愛称で再生された鞍月用水。建物の前の橋には花や植木が飾られ、地域全体に潤いのある雰囲気が漂っています。
せせらぎ
用水の再生、保全だけでなく、市内には新しいせせらぎもつくられています。


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