水の話
 
見直される用水の価値

消火用水や消雪用水のための工夫
 用水の景観や開きょ化を進めれば、そこに流れる水はきれいであってほしいものです。そこで「清流確保」のため、用水の清掃活動も定期的に行なわれています。
冬に除雪作業で苦心する雪国はたくさんあります。特に除雪した雪の捨て場の確保は大変です。金沢市では用水を消雪水路として利用しています。ただ一度にたくさんの雪を捨てると、用水が雪で塞がれる可能性があります。そこで雪捨て場となる用水の中にグレーチングを立てて、雪で塞き止められることなく常に水が流れるスペースを確保しています。
消火のための水源として使いやすいような工夫も見られます。用水の底に水深と直径がそれぞれ1mほどの穴を掘った「釜場」と呼ばれるものをつくり、消火活動の時には穴の中へホースを入れて水を汲み上げやすくしてあります。また、犀川から取水している鞍月用水にはアユなどの川魚が入り込みます。しかし用水を清掃する時には水を抜かなければならないことがあります。そんな時に魚が避難できるように傾斜をつけた四角い穴もつくられています。

雪捨扉 消雪板
鞍月用水の雪捨扉(左)と消雪板(右)。冬になると道路などに積もった雪の捨て場所としても、用水は利用されます。グレーチングを立て大量の雪が捨てられた場合でも水路が塞がらないような工夫もします。(写真提供:金沢市都市政策局)

釜場
水路の中に穴をあけ、消火用ポンプを使いやすくした釜場。普段は万が一の事故を防ぐため、蓋がかぶせられています。


新しいまちづくりにつなげる試み
 全国各地でせせらぎの回復や親水の施設がつくられています。ただし、大きな都会でせせらぎを復活させようと思っても、そのために確保できる土地は公園の中などに限られてしまいます。既にある川を保全するといっても、水をきれいにすることが中心です。ところが金沢市で取り組まれている用水保全は、まちづくりと密接な関係をもっています。つまり用水をきれいにするだけではありません。
開きょ化や用水の整備が進めば昔ながらの狭い道がさらに狭くなる場合があるかもしれません。人と車のどちらを優先させるのかはどこでもが抱えている課題です。人を優先させるのならば、歩行者が安全に歩けるように、交通のあり方を考え直す必要が出てきます。そうした中で新しい交通システムの導入といったこともいろいろと検討されているようです。



世界遺産として次世代に残したい
 金沢市は近世城下町の都市構造をいまに伝えています。浅野川界隈にあるひがし茶屋街は江戸時代からの繁華街として昔日の風情をいまに残しています。江戸時代の金沢は江戸、大坂、京都に次ぐ日本でも有数の大都市でした。そして金箔、漆工芸、友禅などが発達し、伝統産業として現代に受け継がれています。そこで「城下町金沢の文化遺産群と文化的景観」を世界遺産にという動きがあります。こうした背景として、辰巳用水をはじめとした数々の用水がいままで存在してきたことも大きな理由となっていることは確かです。
金沢市を流れる用水は、昭和になってから暗きょ化された個所はありますが、埋められて消滅したものはほとんどありません。これらの用水はいまから300年~400年前につくられた当時の面影を残しています。そればかりか、いまも立派に用水としての役目を果たし、新たなまちづくりの素材として活用されています。

用水
当たり前の風景として市街地を流れる用水。歴史的遺産であり、これからの新しいまちづくりにも大きな役割を担っています。


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