水の話
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水によって復興した都

斜面を登り下りした舟
 疏水は124mの第2トンネルを抜けてしばらく流れ、長さ850mの第3トンネルを通ります。トンネルの上は、交通の難所であった九条山です。
トンネルを出たところが蹴上(けあげ)です。琵琶湖の取水口からここまでの距離は約8kmですが、この間の高低差はわずか3.4mです。現代のような精巧な測量器械のない時代に、正確な勾配を計算しながらつくられています。
蹴上では明治45年(1912年)に完成した第2疏水と合流します。これは増大する京都の水需要に応えるため、最初につくられた疏水と平行するようにつくられています。ただし飲料用を目的としているため琵琶湖から蹴上までトンネルになっています。新しく疏水がつくられたため、最初の疏水を第1疏水と呼んでいます。水量は第1疏水が毎秒8.35m3、第2疏水が毎秒15.3m3です。このうち毎秒9.83m3が上水道用として使われています。
蹴上から先は山の斜面を下らなければなりません。水平距離にして582m、高低差は36mです。水路は暗渠にすることができますが、舟を通すことはできません。そこで舟を運ぶために考えられたのがインクライン(傾斜鉄道)です。山の斜面に線路を敷き、荷物を積んだ舟をそのまま台車に乗せて運ぶというものでした。仕組みそのものは簡単で、直径3.2mのドラム(巻上機)にロープを付け、それで台車を引っ張るという方法で、原理はケーブルカーと同じです。完成した当時は世界最長のインクラインでした。
ケーブルを動かす動力には蹴上につくられた発電所の電力が使われました。インクラインの上には蹴上舟溜が、下には南禅寺舟溜がつくられ、そこで舟は台車に乗せたり降ろしたりしました。
スキー場のゲレンデのような形をしたインクラインの真下をアーチ状のレンガづくりのトンネルが通っています。トンネルの壁のレンガが斜めに積み上げられています。壁面全体がねじれているようにみえるため、「ねじりまんぽ」と呼ばれています。「まんぽ」とは要するにトンネルのことです。トンネルのすぐ上をインクラインが通っています。しかもトンネルとインクラインは斜めに交差しています。このような場合、レンガを平行に積んでいくと上からの力を支えきれなくなるため、わざと斜めに積み上げているのです。

夷川(えびすがわ)発電所
大正3年(1914年)に完成した琵琶湖疏水を使った夷川(えびすがわ)発電所。認可出力300キロワットで、現在も発電を行っています。
ベルトン水車
インクラインを下ったところに蹴上発電所がつくられ、そこで発電用に使われていたベルトン水車。水車の右側にある弾み車にベルトを掛け、発電機を回していました。ベルトン水車は現在でも黒部第4発電所(富山県)などで使われています。


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