源兵衛川の上流部は川の中にとび石があり、水辺の散歩道として多くの市民に親しまれています。
市民・企業・行政の連携と協力関係によって、ゴミだらけだった源兵衛川は、7年の歳月をかけて見事に美しい水辺環境によみがえりました。源兵衛川の再生をきっかけに芽を出した住民参加の水辺環境づくりは、その後も引き続き“新しい街づくり”へと広がっていきました。代表的なのは、2001年から水と緑のネットワークづくりを目標に、多くの市民参加を得て進められた「街中がせせらぎ事業」です。これは、1996年三島商工会議所が創立50周年の記念事業として打ち出した「歩きたい街」「住みたい街」をめざす「街中がせせらぎビジョン」がきっかけとなり、中心市街地にある水辺や緑の自然空間や、歴史・文化のアメニティ資源を活用し、それらをネットワークする回遊ルートを整備する事業です。
この事業も、源兵衛川の再生事業に倣い、市民・企業・行政の協働でつくる街づくり事業として進められました。計画策定時からの話し合いは実に400回以上です。市民が主導的に基本計画・実施計画づくりを行い、専門家によるデザイン会議も取り入れました。具体的には、市街地の回遊ルートや川沿いのプロムナードの整備、三島駅前やほたるの里などの拠点整備、街に潤いと彩りを添える「水の仕掛け事業」を実現しています。整備後の維持管理は住民や企業主導で行い、まさに官民一体の協働事業によって、常に水のせせらぎを感じられる街、おもてなしの街へと成長しました。観光客も事業前に比べ倍増し、多くの人が今でも三島の街を歩いています。近年は、さらに街の中に「花」という癒しと彩りを添えようと、「ガーデンシティみしま」という取り組みを始めました。整備地域も、市街地からさらに郊外へと広がり、三島市はより華やかで美しくなって大勢の人をもてなしてくれるでしょう。
現在三島市では、ホタルが舞い、カワセミが飛び、子どもたちが水遊びや魚とりに興じる姿が当たり前の風景になりました。1日街を歩いてみると、水生生物や小さな魚、水鳥が住む川の間を、子どもやお年寄り、ペットを連れた人など、人々が行き交う姿を目にします。近年、都市の一部では、自然でさえも危険因子とみなして壁やフェンスで隔たりをつくってしまう地域がある一方で、三島の水風景はまるでグラデーションのように人々の暮らしの中に溶け込んでいます。
源兵衛川は新幹線が停車する三島駅から歩いて約5分。その場所に、ホタルが飛び交う環境、子どもが水遊びを楽しむ環境を三島市民は自らの手で取り戻しました。多くの大人たちが記憶の中に抱いていた60年前の三島の原風景を、現代の暮らしの中によみがえらせることができたのです。そして、この美しいせせらぎ溢れる風景もまた、今の三島の子どもたちの原風景となって、次の世代へと受け継がれていくことでしょう。