除草剤に強い大豆 |
遺伝子組み換えを応用すれば、たとえば乾燥や塩害に強い作物を作り出すことも可能です。より大きな実のなる作物を作れば食料の増産にも役立ちます。将来、地球の人口増加による食料不足のことを考えれば、こうした研究も必要になってくるでしょう。乾燥や塩に強い作物は、体内にグリシンベタイン(浸透圧調整物質)等をたくさん蓄積しています。そして、常にストレスのある方がかえって育ち易いとされています。こうした性質を利用してグリシンベタインを合成する遺伝子を組み込ませた稲の研究も行われています。海辺に近い田んぼなどが、台風で海水を被っても枯れないようにしようという訳です。
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◆遺伝子組み換えで乾燥や塩に強くした稲
グリシンベタイン(浸透圧調整物質)を合成する遺伝子を組み込んだ稲(右)と通常の稲(左)。海水濃度の約3分の1の塩水で3日間育てた状態。通常の稲はほとんどの葉先まで枯れかかっていますが、グリシンベタインを持たせた稲は枯れている部分の少ないことが分かります。一時的に塩水に浸かった程度ならば、ほとんど影響はないとされています。また、ほとんど枯れた状態になっても、10日ほどすると元どおりに復活します。(写真提供:名古屋大学高倍鉄子助教授)
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大豆の場合はすでに除草剤に強いものがアメリカで栽培され、日本も輸入しています。これは、組み換えられた遺伝子が、除草剤の中のある種の成分と結合することにより、除草剤の活性を阻害するようになる、というものです。つまり、大豆畑に除草剤をまいたときに、その薬に強い大豆だけが生き残るというのです。これなら、確かに大豆の生産量は上がるでしょう。ただ、いくつかの問題を指摘する声もあります。大豆は、他花受精の少ない作物だといわれていますが、万一、近縁種と交配してしまったとき、除草剤への耐性を備えたものが、できてしまわないとも限りません。そうなると、また新たに除草剤とその薬に強い大豆を作り出さなければならなくなってしまいます。遺伝子がどんどん組み換えられていったとき、はたしてどんな大豆が作られてしまうのか、という不安もあります。
遺伝子組み換え食品でやっかいなことは、一般人にはそのことを外観から判断することができないということです。たとえば、ある種のナッツの遺伝子が組み込まれた大豆を知らずに食べたとします。その人がアレルギー過敏症であったとすると、大事に至らないとも限りません。いまのところ国内では遺伝子組み換えの大豆は栽培されていませんが、今後はアメリカ以外の国でも遺伝子組み換え大豆が栽培され、日本へ輸入される可能性は増えてきます。そこで、遺伝子組み換えを使っているかどうかを表示して消費者の選択の自由を保証しようとの動きがでています。ただ、遺伝子を組み換えた大豆だからといって、従来からの大豆と味が変わることはありません。味に影響を与えるのは、なんといっても水にあります。
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