豆腐は柔らかいものというのは、常識です。しかし、堅い豆腐も探せば結構あるものです。そのなかでよく知られているのが凍豆腐です。堅めに作った木綿豆腐を切って、マイナス15度前後で凍らせます。すると大豆たんぱくがスポンジ状に変化するので、これを解凍し水けを絞り乾燥させます。高野豆腐とか凍み豆腐と呼ばれています。
京都には豆腐羮(とうふかん)と呼ばれているものがあります。豆腐をつくるとき重しを乗せて水分をよく切り、沸かした醤油に漬けてつくります。堅いといってもチーズのような感じです。岐阜県の大和町には鎌倉時代から伝わるとされている母袋燻り(もたいいぶり)豆腐があります。これは豆腐の薫製でこれもチーズに似た味だとされています。
しかし、もっと堅い豆腐があります。岩手県の六浄豆腐です。別名、精進節ともいって、出羽山麓で修験者の携行食として作られたのが起源だとされています。堅めに作った豆腐に塩をたっぷりまぶし、天日で乾燥させて作ります。あまりにも堅く、そのままでは食べられないので、鉈で薄く削り、汁ものの具にしたりして使われます。
豆腐がいくら柔らかだといっても80~90%もの水分が含まれています。水分をどんどん抜いていけば堅くなって当然、ということです。でも、あの舌触りを犠牲にしてまで、なぜ豆腐を堅くしたかといえば、保存のためです。それも、漬物のように冬場の保存食ではなく、むしろ年間を通しての食料であったようです。やはり、豆腐は貴重なたんぱく源だったのです。
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母袋燻り豆腐
(もたいいぶりとうふ)
鎌倉時代から伝えられているという豆腐。豆腐を薫製にしたもので、1ヵ月くらいは保存がきくそうです。 |