水の話
 
日本人が食べてきたもの

春の七草は日本野菜の原点か
 正月七日に食べると邪気を払うといわれる春の七草は、セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ(ハコベ)・ホトケノザ・スズナ・スズシロを指しています。これは、もともと米、麦、粟、稗、黍、大豆、小豆など七種の穀物で作られた七種粥というものが、正月に若菜を摘む行事と混同されて、七草粥になったとされています。七草のうち、スズナはカブ、スズシロはダイコンです。ナズナはアブラナ科でペンペングサの名で知られています。ハコベラはナデシコ科の植物、ゴギョウはキク科のハハコグサを指しています。ホトケノザはキク科のコオニタビラコのことで、現在、一般にホトケノザと呼ばれているのはシソ科のサンガイソウといわれていた植物で、これは食べられません。これらの植物の原産地はヨーロッパ方面で有史以前に日本に帰化したとされています。

ところで、七草のうちゴギョウ、ナズナは冬の終わり頃から採取でき、ハコベラは冬でも青々と繁っています。スズナ(カブラ)とスズシロ(ダイコン)は日本へはかなり古くに伝わり、栽培されてきました。カブラもダイコンも中近東が原産地とされています。そして、共に主食を補う食品とされていたようです。おそらく畑などで栽培される植物は、現在に比べるとまだまだわずかしかなかったため、野山へ行って、様々な菜を摘んできたのではないのでしょうか。
七草粥
七草粥
5世紀頃に記された中国の書物に、正月七日に七種の菜で羹(あつもの=吸い物)を作って食べれば万病にかからないという風習があると書かれています。それが日本へ伝わり、七種の穀物で作った粥を食べる風習と混同されて、邪気を払う「七草粥」になったといわれています。

春の七草
春の七草。昔から日本人に馴染みの深い植物ですが、この中で日本が原産地とされているのはセリぐらいだといわれています。ゴギョウ、ナズナはどこにでも見られる雑草ですが、もともとホトケノザの名でよばれてきたコオニタビラコは、帰化植物のオニタビラコに入れ替わりつつあるようです。

山菜は山のもの、それとも野のもの
 万葉人が春になると野へ出かけて菜を摘んだように、現代人もまた、春になると山菜採りを楽しみます。タラノメ、コゴミ(クサソテツ)、ゼンマイなどが山菜の代表のようにいわれていますが、山菜とはどういった植物のことを指すのでしょうか。大きく捉えれば、畑で栽培されない食べられる植物ということができます。ただし、畑で栽培されていたものが野生化したものは含まれません。逆にフキやワサビのように畑で栽培されているものでも、本来の野生のままで生えているものを山菜と呼んでいることもあります。

 一方、山菜と野草を分ける考え方もあります。野菜とは、もともとは野にあって食べられる菜のことを指す言葉でした。つまり、野菜は野草を品種改良したものともいえるのです。ところが、山菜から野菜と呼ばれるようになったものはあまりありません。タラノメなど栽培されるようになったものもありますが、野菜とは呼ばず、やはり山菜と呼んでいます。山菜はあくまでも山のものであり、ツクシやノビルは野のものというわけです。

かといって、山と野を分ける明確な境界線などありません。山菜と野草を分けるといっても、かなり感覚的な分類になりがちです。むしろ境界線があいまいだからこそ、山菜と野草の区別をする必要はないという考え方もでてきます。そこで、山の山菜、野の山菜、あるいは、里で採れる山菜、水辺の山菜、海辺の山菜といった表現さえみられます。
山菜採り
山菜採りのマナーにはいろいろなことがあります。とくに、一か所から根こそぎ採って持ち帰ると、翌年には芽を出せなくなってしまいます。

ヨモギの草木染め ヨモギの草木染め
昔から草餅の材料として知られていますが、葉の裏面に生えている毛はお灸のモグサとして使われています。さらに、葉をよくもんだものは、打ち身に効く薬草として使ったり、草木染めにも使われます。


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