水の話
 
日本人が食べてきたもの

山菜は基本的に多年草
 山菜と野草を区別する場合、生えている地理的条件の違いで区別する考え方がありますが、山菜といえばなんといっても東北地方や信州などの山国が連想されます。こうした地方は冬の間、深い雪に閉ざされ、春はゆっくりと訪れるため、雪解けを待ってから種を蒔いていたのでは、収穫するまでに時間がかかり過ぎてしまいます。現代の野菜にはナス科、アブラナ科といった、春に種を蒔き、初夏から秋にかけて収穫できる1年草が多く含まれていますが、山国で山菜と呼ばれているものの多くは多年草や木本で、雪解けと同時に芽吹きます。そのため、冬が終わるとすぐに食料として利用できるのです。

 1年草というのは春から夏にかけて芽生え、秋までには花を咲かせて種子をつくり枯れてしまい、冬は種で過ごします。それに対し、地上の葉や茎は枯れても地中の根は何年も残り、毎年新しい茎を立てるのが多年草です。1年の半分以上が雪で覆われる高山に咲く植物も多くが多年草です。夏が短く、春と秋は一瞬に過ぎてしまうため、実をつける期間が限られてしまうからです。そのため、山菜は基本的に多年草だといった考え方もでてきます。たしかに野草といわれるものには1年草や越年草もたくさんありますが、多年草もかなり含まれています。

一方、山菜(食べられる野草)の生育場所には、日当りが良く、適度な水分のある土壌という、ある程度の共通性が見られます。そのため、山国に山菜が豊富なのは、雪解け水による水分の補給がいち早く行われるからだという考え方もあります。さらに、水気がないように思われる場所でも、霧や雲によって水分が補給されます。平地でも、田んぼやその背後に続く里山が、食べられる野草の宝庫となっている場合が多いようです。里山は田畑の肥料や燃料用の薪の採取場所というだけでなく、水の供給場所でもあったのです。
山菜
山国では重要な副食物として利用されてきた山菜。乾燥したり塩漬にして年間を通して食べるため、東北地方では、一戸当たり300kg以上採集していたときもありました。いまでは、都市での需要がかなり増えています。

山菜が野菜になれなかった理由
 野菜も元を正せば野生の植物です。その中から人間にとって利用しやすいものが野菜として栽培されていったのです。野菜としての条件は食べておいしいことはもちろんのこと、食用にできる部分が大きく、種を蒔いてから収穫までが短いことがあげられます。短期間での収穫となれば、1年草の植物の方が多年草よりも野菜には向いています。しかし、人為的に育てられるため野生に比べ繁殖力が劣ってきます。

このような野菜としての条件をそろえるには、人間の手による品種改良が必要です。優れた品種同士を掛け合わせていくことによって、新しい、人間にとってより都合のいい作物となっていくのです。そうした中で品種としても様々に分化していったのが、野菜です。言い替えれば、分化しやすいものが野菜となっていったのです。

日本は地形や気候の変化に富み、植物の種類が豊富な上、毒を持つ植物もそれほど多くはありません。日本には食べられる野草や山菜が豊富にあったのです。しかも、日本原産とされる山菜は品種の分化が起きにくいといわれています。わざわざ野菜へと改良させる必要がなかったのかもしれません。

朝市

畑
畑で栽培されるとか、山に自然に生えているということだけが、野菜と山菜の違いではありません。畑の周りにも、食べられる野草がはえていることはよくあります。朝市でも山菜がよく売られています。
山でみられる山菜
イネ科:ネマガリタケ
イラクサ科:ウワバミソウ、ミヤマイラクサ
ウコギ科:タラノキ、コシアブラ、ウド
ウラボシ科:コゴミ(クサソテツ)
キキョウ科:ツリガネニンジン、ソバナ
キク科:モミジガサ、ヤブレガサ、ヨブスマソウ、ヤマゴボウ(モリアザミ)
キンポウゲ科:ニリンソウ
スミレ科:スミレサイシン、オオバキスミレ
ゼンマイ科:ゼンマイ
ユリ科:シオデ、オオバギボウシ、ギョウジャニンニク、ヤマユリ、カタクリ、アマドコロ、ユキザサ、アマナ

野や里でみられる野草(山菜)
アカザ科:アカザ、シロザ
アブラナ科:イヌガラシ、ナズナ、ハマダイコン
イノモトソウ科:ワラビ
キク科:ハハコグサ(ゴギョウ)、ヨメナ、ヨモギ、コオニタビラコ、タンポポ、フキ
シソ科:カキドオシ
タデ科:ギシギシ、スイバ、イタドリ
トクサ科:ツクシ
ナデシコ科:ハコベ
ユリ科:ノビル、サルトリイバラ、ノカンゾウ

水辺でみられる野草(山菜)
アブラナ科:ワサビ、オランダガラシ
イネ科:マコモ
オモダカ科:オモダカ
キク科:サワオグルマ
スイレン科:ジュンサイ
セリ科:セリ
ヒシ科:ヒシ


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