水の話
 
自然が与えてくれた豊かな恵

山の幸をおいしく味わう
 山菜を使った料理として、都会でもよく見かけるのが山菜そばです。しかし、そばの上に盛られた山菜は、ワラビやキノコ類がほとんどで、山菜の種類はそれほど多くはないようです。一方、山国では、山菜料理が郷土自慢の味となっています。土産物にも山菜の漬物が並んでいます。

ところで、山菜にはアクの強いものがたくさんあります。渋味、苦味、エグ味など、味のマイナスの要因となるものをアクと呼んでいます。ただし、微量のアクはかえってその食品のもつ個性となります。例えばフキノトウもあの独特の苦味が好まれ、生のまま刻んで味噌汁の薬味にしたり、そのまま火であぶり、練味噌を付けて食べられたりします。とくに春は、冬の間に体内に溜まった脂肪分を和らげ、夏の暑さに備えるためにも苦味はいいとされています。

しかし、一般にアクは好まれません。そこで、様々なアク抜きが考えられ、使われてきました。水に晒す、塩水に漬ける、酢に漬ける、灰汁に漬ける、熱湯を潜らせる、揚げる(天ぷら)などです。アクには水溶性のものと非水溶性のものがあり、水溶性のものは水に晒すだけで除去できますが、非水溶性のアクはアルカリなどで中和しなければなりません。アルカリ液としては灰を加えた水がよく使われます。ワラビも灰汁の中に1~2日浸してアクを抜きます。ヤマゴボウ(モリアザミ)は流水に浸すか塩水に2日ほど晒し、ウドは酢でアク抜きします。タケノコのように、米糠で茹でるものもあります。タラノメはアクがあまりありませんが、山で仕事をする人は、たき火の灰の中へ入れて蒸し焼きにし、味噌をつけて食べるそうです。これは灰汁でゆでるのと同じ効果になるからです。
ヨモギモチ
ヨモギモチ
葉の裏の綿毛がつなぎの役目をします。そのため、ソバを打つときにつなぎとしてヨモギを入れる地方もあります。
コシアブラとツクシのてんぷら
コシアブラとツクシのてんぷら
コシアブラは脂肪とたんぱく質に富んでいるため、ビールのつまみにも合いそうです。

ツリガネニンジン(トトキ)の胡麻あえ スギナ茶 山菜ソバ
ツリガネニンジン(トトキ)の胡麻あえ
「山でうまいはオケラにトトキ」という言葉があります。秋になると釣鐘状をしたうす紫のかわいい花を咲かせます。
スギナ茶
スギナは一般には食べられないとされていますが、地方によってはつくだ煮や酢のものにするところもあります。
山菜ソバ
ソバはやせた土地でも栽培できるため、山国などでは米の代わりとして作られてきました。そんなソバに山菜を組み合わせることによって、お互いを引き立たせているのが山菜ソバの魅力です。

山菜と食べられる雑草
 田畑はもちろん、公園、庭、道端に作られた花壇などで人が植えた草花以外の植物は、雑草と見られがちです。雑草は駆除しないとはびこるものとされています。しかし、雑草は人が土地を切り開いて常に日当りの良い状態にしたり、水を引いて田んぼにすること、つまり人が土地を撹乱したような場所で繁殖します。人がその土地に手を加えなくなれば、他の植物が繁茂して日当りが悪くなったり、水が枯れて、雑草といえども繁殖できなくなることは多いのです。人が手を加えていない自然の状態で生育する草花を野草と呼び、雑草と区別する考え方があります。では、食べられる野草も含めた山菜は雑草といっていいのでしょうか。田畑の周りで採れる山菜は、多くが雑草といってもいいかもしれません。山菜や野草の料理として実に多くの植物が紹介されています。例えば、オオマツヨイグサ、スベリヒユ、イヌビユ、カタバミ、シロツメクサ、スミレ、ツユクサ、ヒメジョオン、レンゲソウなどがあります。これらもほとんどは雑草とされている植物です。ただ、雑草といっても、昔から日本に生えていたものもあれば、もともと日本にはなかったセイタカアワダチソウ、ブタクサ、オオマツヨイグサ、ヒメジョオンといった帰化植物もあります。さらに、タンポポ、ナノハナ、あるいは春の七草のハコベラやホトケノザ(コオニタビラコ)にも在来種とよく似た帰化植物が増えています。帰化植物は人が自然に対して、手を加えることによって繁殖するものも多いのです。


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