国によって異なる外来種による影響
生物はそれぞれが生息している環境の中で、互いに共存しながら「食う・食われる」の関係を調和的に保ってきました。例えばプランクトンを食べる小魚は中型の魚に食べられ、中型の魚はより大型の魚のエサとなります。これを食物連鎖といいます。弱肉強食といわれる自然界では、生物は長い歴史の中で築かれた食物連鎖によって共存のバランスを培ってきました。ところが、そうして築かれた食物連鎖の中に全く異質の外来生物が入り込むと、エサの奪い合いや、もともといた生物が産卵に使っていた場所を消滅させたり、捕食によって他の生物を絶滅に追いやるなどの悪影響が出ることもあるのです。こうした他の生物に深刻な悪影響を与えるものを「侵略的外来生物」と呼んでいます。
全長18センチにも成長するウシガエルは、日本に生息しているカエルの中では最大のカエルです。大正時代に食用として導入され、一時は原産地アメリカ合衆国へ食肉として大量に輸出され、外貨の稼ぎ頭となったこともありました。ところが輸出した肉から高濃度の農薬が検出されたために輸出が激減、その後、野生化したウシガエルが各地の池や沼で繁殖し、勢力を盛り返しているようです。ウシガエルは、非常に捕食性が強く、口に入る大きさの動物であれば、水生昆虫、魚、ヘビ、小鳥、ネズミなどほとんどの動物を食べてしまいます。
(◎写真提供:中井克樹氏)
◆世界の侵略的外来生物100の中の爬虫類、両生類、魚類
爬虫類
アカミミガメ、ミナミオオガシラ
両生類
ウシガエル、オオヒキガエル、コキコヤスガエル
魚 類
ウォーキングキャットフィッシュ(ヒレナマズの1種)、
オオクチバス(ブラックバス)、カダヤシ、
カワスズメ(モザンビークテラピア)、コイ、
ナイルパーチ、ニジマス、ブラウントラウト
この他に、植物ではホテイアオイ、軟体動物ではスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)なども記載されています。魚類のコイ、哺乳類のオコジョ、植物のイタドリ、クズといった日本ではごく普通に見られる生物も世界の侵略的外来生物ワースト100の中に含まれています。
これらの生物は地域を越え、地球上の多くの場所で、他の生物の生存を危ぶませているとされています。
野性化したアライグマは、農作物を食い荒らすなどの被害を与えています。(◎)
カムルチーは1920年代に朝鮮半島から導入され、現在では九州から北海道まで分布を広げています。(◎)
カワマスはマスの名前が付けられていますがイワナ属に属します。在来のイワナとの交雑が懸念されています。(◎)
ボウフラの駆除を目的に世界各地で導入されたカダヤシですが、いまでは在来種との間で問題を起こしています。(◎)
子ガメはミドリガメと呼ばれているミシシッピアカミミガメ。成長すると鋭い口と強いあごで噛み付くことがあります。(◎)
オオクチバス(ブラックバス)は大人の握りこぶしが入ってしまうほどの大きな口ということから名付けられました。
稚魚、魚の卵、水生昆虫、エビ類、水草など何でも食べるブルーギル。在来生物への広範な影響が問題視されています。
ジャンボタニシ:南米原産の淡水巻貝で正式名称はスクミリンゴガイ。農作物への食害が問題化しています。(◎)
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