水の話
 
市民・行政が一体となっての霞ヶ浦再生プロジェクト

急がれる窒素・リンの除去
 湖沼などに窒素・リンといった栄養塩類が増加し、藻類が異常繁殖して富栄養化すると、アオコが発生します。富栄養化の原因となる窒素・リンは主に生活排水が中心となっています。
生活排水による汚濁の割合が高いのは、一つには企業からの排水が厳しく規制されるようになり、相対的に生活系の割合が高まったことがある一方で、生活排水の規制が十分にできなかったことも原因です。これまでは、水質汚濁の大きな原因がBODにあると考えられ、BOD除去に力が入れられてきました。しかし、BODの除去だけでは水質改善に十分な効果が発揮できなかったのです。
BODをいくら除去してもなぜ、水質が改善されないのでしょうか。水を入れた2つのコップを用意して、片方には窒素とリンを加え、2つのコップを日光に当てておきます。2つのコップにはほとんどBODが含まれてはいません。しかし、窒素・リンを加えた方のコップは緑色に変化していきます。これは水の中に微量に含まれていた藻類が窒素とリンを栄養源として、空気中の二酸化炭素を取り込み、光合成を行った結果です。こうして増えた藻類はやがて分解してBODとなり水質を悪化させるという悪循環が繰り返されていきます。窒素とリンさえ補給し続けていけば、アオコはどんどん増えていくのです。
窒素・リンはもともと植物の成長には必要不可欠な栄養素です。しかし、窒素・リンが過剰に供給されると、藻類が増え過ぎてしまいます。
従来の浄化槽の方式では、BODの除去は十分に行えても、リンの除去はできなかったのです。窒素かリンのどちらかを完全に除去できればアオコなどの増殖を防ぐことは可能ですが、窒素・リンは自然界にも存在し、どちらかを完全に無くすことは不可能です。そこでこの両者をともに削減することが水質浄化にとって最も重要だということになってきたのです。

アオコで緑色に染まった川。河口部分は流れがほとんどないため、湖からアオコが進入してきたのでしょうか。それとも川そのものが生活排水で汚れているためなのでしょうか。
共同の洗濯場跡

アシ アシ アシ
アシによる水質浄化を試みるため、湖岸では、あちらこちらでアシの植栽が行われています。同じようにたくさん生えていたマコモにも水質浄化の効果があると言われています。
(左はアシを植栽したところ。上は植栽されたマコモ)
かつて霞ヶ浦の湖岸には、たくさんのアシが生え、水質の浄化や魚の産卵場所となっていました。いまでは、自然の状態でアシが生えている場所はわずかしか残されていません。
アシ

厳しい水質規制にも係らず悪化する水質
 霞ヶ浦でアオコが大量発生するようになった原因は、窒素・リンの増加に加え、護岸改修による水草の減少や、かつて自然浄化が行われていた場所が開発されて消失するなど、霞ヶ浦自体の浄化力の低下が考えられます。しかも水深が浅く長期間にわたり水が滞留するため、藻類にとって増殖しやすい環境になっているからです。
茨城県では霞ヶ浦の水質を改善するためには窒素・リンの削減が重要との考え方に立ち、1981年には「茨城県霞ヶ浦の富栄養化の防止に関する条例」を制定し、霞ヶ浦の総合的な浄化対策を進めてきましたが、思うように水質改善がはかどりませんでした。その大きな理由として考えられるのが、窒素・リンの流入量の増加です。生活様式の変化による汲み取り式トイレの減少は、生活排水中の窒素・リンの増加をもたらす結果となったのです。
汲み取り式トイレの場合は、し尿を流域外の処理場まで運び出して処理します。処理場では窒素・リンも処理されます。一方、トイレの水洗化は浄化槽の普及を促しました。従来の浄化槽は生活排水からBODを除去するには効果がありました。窒素を除去する浄化槽も開発されていましたが、リンの除去を行うことができませんでした。さらに霞ヶ浦流域の人口の増加が窒素・リンの流入量を増加させていきました。
こうした中で茨城県は平成9年から14年まで「霞ヶ浦水質浄化プロジェクト」を実施しました。このプロジェクトの一つとして県内の研究機関、企業などとともに、窒素・リン除去型高度処理浄化槽の開発に力が入れられました。
バイオエコエンジニアリング研究所
霞ヶ浦のほとりにある独立行政法人国立環境研究所バイオエコエンジニアリング研究所。この研究所でも、霞ヶ浦再生のため、様々な研究が行われています。


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