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湿原の夏という言葉からは、色とりどりの花が咲き競い心地よい風が吹き渡るといった、日常とは違う美しい世界が目に浮かびます。
一方、湿地というとじめじめした場所を連想する人もいるようです。湿原と湿地に違いはあるのでしょうか。
また、そうした場所の動植物に特徴はあるのでしょうか。 |
いろいろな場所を指す湿地 |
単に湿地というと、ぬかるんだ場所を思い起こす方が多いと思われます。ぬかるんだ場所といっても水田、干潟、池や湖の周り、湧き水のある場所、河原などさまざまです。実はこれらの場所のほとんどが湿地として定義されています。ただしこの場合の定義とは水鳥の保護を目的として1971年につくられた「ラムサール条約」(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)によるものです。つまり、水鳥が利用するような場所なら海水域、汽水域、淡水域に関係なく、干潮時の海岸線を基準にして水深が5メートル以内となる海の他、河口や池、川、湖、水田など全て湿地ということになります。しかし湿地はこうした広い意味で使われるだけではありません。丘陵地の崖で湧水によって湿った場所を湿地と呼ぶことがあり、こうした湿地はとくに湧水湿地として一般の湿地と分けることもあります。 |
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尾瀬ヶ原は水面に浮かぶ「浮き島」が有名です。浮き島はミズゴケや水の中に堆積した植物がちぎれて島のようになったものです。
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岐阜県の蛭ヶ野高原は海抜875メートルにあり、ここは日本海側と太平洋側へ注ぐ川の源であり分水嶺になっています。この辺りはミズバショウで知られる高層湿原も形成しています。ミズバショウは花が巨大化することもありますが、これは生活排水などの影響による湿地の富栄養化も原因の一つと考えられています。 |
何千年もの歳月をかけてつくられていく湿原 |
尾瀬ヶ原や釧路湿原は日本を代表する湿原です。湿原特有の植物が一面を覆う草原状の風景が広がります。このような広々とした湿原の多くは北海道や中部地方より北にある山地のような寒冷な地域にあります。寒冷な気候が湿原の要素の一つとなっているようです。湿原がつくられるのは河川の氾濫や地下からの湧水、雨水や雪解け水などで水が溜まったところです。水が溜まっているだけならば池と同じです。そこにヨシなどの植物が繁殖しても、普通は枯れて分解されてしまいます。ところが寒冷な地域ではなかなか分解が進まず、池や湖のような場所に枯れた植物が堆積していくと、湿原がつくられていきます。湿原の表面が周囲よりも低い場合を低層湿原と呼んでいます。釧路湿原の大部分は低層湿原になっています。
さらに枯れた植物などが堆積していくと、湿原の表面は周囲よりも高く盛り上がってきます。こうした状態になったところは高層湿原と呼んでいます。高層湿原に供給される水は栄養分が少ない雨水が中心となるため、貧栄養にも耐えるミズゴケが繁殖します。寒冷な地域ではミズゴケが枯れても分解がなかなか進まず、ミズゴケはやがて泥炭となります。泥炭は1年に1ミリほどのゆっくりとしたスピードで堆積して、高層湿原もやがては陸地へと変化していきます。低層湿原から高層湿原への移行中のものとして中間湿原がありますが、すべての低層湿原が必ずしも中間湿原を経て高層湿原へと変化していくわけではありません。代表的な低層湿原としては釧路湿原が、高層湿原としては尾瀬ヶ原があります。こうした湿原が形成されるには、何千年から何万年という長い時間が必要です。 |
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