水の話
 
湿地という言葉で表される場所

人々の暮らしを支えてきた湿地
 様々な湿地の中で人々の暮しと密接な関係を持ってきたのが水田と干潟です。干潟は河口に形成され、川から流れ込む栄養分によって海藻が育ち、魚介類も集まってきます。しかも潮が引くことによって、人々はそれらの海藻や魚介類を容易に手に入れることができるなど食料の確保が容易なため、干潟は縄文時代から多くの人々の生活の場として利用されてきました。干潟の栄養分が豊かなのは、川から栄養分が流れ込むからです。
川岸に生えている植物が枯れたり魚や貝の屍体などが有機物として水に溶け込み、川の栄養分となります。家庭からの排水の量がわずかしかなかったときは川の生物を育てる栄養となりますが、量が増え過ぎると、かえって川を汚す原因となっています。干潟は川から運ばれてきた栄養分を沖へ拡散させることなく溜めることができる仕組みを持っています。だから貝や海藻が繁殖しやすい場所になるのです。貝やゴカイといった干潟の生物は水の中の有機物を濾しとってエサにします。そして貝やゴカイは水鳥のエサとなって干潟の外に持ち出されます。干潟はそこにすむ生物の自浄作用によって、一種の浄化槽のように働き、海の汚れを防いでいるのです。
河口部分の海側の湿地が干潟だとすれば、陸地側にも川の氾濫などによって作られた湿地がありました。ここにも栄養分を含んだ土砂が上流から運ばれてきました。陸地側の湿地はヨシなどの植物が繁り、水生昆虫、魚、水鳥などがすんでいました。陸地側の湿地は稲作が日本へ伝えられてから徐々に水田へと変化していきます。ただし治水技術が十分に発達していなかった時代には、湿地が全て水田になったわけではありません。湿地から水田へと変化をしても、湿地の動植物にとっては同じような環境であったため、そのまま生き延びることが可能となりました。

干潟 干潟では上流から流れ込んだ栄養塩は塩分と触れることによって凝固沈澱します。水深が浅く海底にまで光が届くため、水中の全層で光合成が行われます。そのため干潟は地球上で最も生産力の高い場所だといわれています。ところが多くの干潟が消失し、しかも干潟の浄化作用を上回る生活排水が流入して十分に機能を発揮できなくなっている干潟もあります。
水田 日本の水田面積は約300万ha。すべての水田に水を張ると、90億m3にもなるといわれています。こうした広さから見ても湿地としての水田の持つ役割の大きさが分かります。


メニュー1 2 3 4 5 6次のページ