ゆでると赤くなる理由
イセエビは正確にいえば日本近海にすんでいる1種類のエビだけを指しています。イセエビの仲間は世界中に50種ほどがいて、日本にもシマイセエビ、ニシキエビ、カノコイセエビなど10種類のイセエビの仲間がいます。シマイセエビは体長約30cm、脚に白い線が入っていたり体色がイセエビよりも若干黒みを帯びています。太平洋諸島に広く分布し、日本では伊豆諸島以南に分布しています。イセエビの仲間で最大のものがニシキエビで体長は約50cm、相模湾よりも南に生息しています。淡青色の地に黄やピンクの美しい模様があります。
エビを蝦と書くのは、エビを湯に入れると紅色の美しい色になるところに由来する文字だといわれています。日本語のエビも熱を加えた時に体の色が葡萄色(えびいろ)になるところから来ているともいわれています。ところで、エビはゆでるとなぜ赤くなるのでしょうか。ニシキエビのような美しい色彩を持つエビやカニもゆでると赤くなります。エビの殻にはアスタキサンチンという赤い色素が含まれています。ところがエビが生きているとき、アスタキサンチンはタンパク質と結びつき、カロテノプロテインという別の色の物質となっています。ニシキエビの青、緑、茶などもカロテノプロテインによるものです。カロテノプロテインは熱を加えるとタンパク質から離れ、エビはアスタキサンチンの本来の赤色になるのです。
カノコイセエビ。一見するとイセエビと同じように見えますが、カノコイセエビは子鹿のような白い斑点があります。(鳥羽水族館)
海底に、写真のような岩礁のある場所がイセエビのすみかとなっています。
シマイセエビ。脚と触角にしま模様があります。伊豆諸島よりも南にすんでいます。(鳥羽水族館)
セミエビ。ユニークな顔をしていますが、これも広い意味でイセエビの仲間です。(鳥羽水族館)
ニシキエビ。イセエビの仲間では最大で、大きなものは体長55cm、体重6kgにもなります。(鳥羽水族館)
親とは全く似ていない幼生時代
イセエビの生態にはまだまだ謎の部分がたくさんあります。成体になると約30cmにまで成長します。夏、メスは数十万個の卵を産みます。卵はメスの体についたまま1~2カ月でふ化します。卵からかえった幼生はフィロソーマと呼ばれ、海中を漂いながら成長します。フィロソーマはエビというよりはクモのような形で色も透明です。フィロソーマがどこでどのようにして生活をしているのかはまだ十分に解明されておりません。ただ、イセエビの成体がいない沖縄の海でも見つかっていることから、海流に乗って浮遊生活をしているものと考えられています。
卵からふ化したフィロソーマは約30回もの脱皮を繰り返しながら3cmほどの大きさに成長します。1年後に幼生として最後の脱皮を終えるとガラスエビとも呼ばれる幼生を経て稚エビへと変態し、やっと海底生活をはじめます。形はエビですが、名前の通りガラスのように透明です。
産まれてから稚エビになるまで、自然界の中で何をエサとして、どんな環境下で暮らしているのかがよく分かっていないため、人工飼育は非常に難しいとされています。これまでごく一部の大学や研究機関では成功してきましたが、2006年5月に民間の水族館としては初めて鳥羽水族館が人工飼育によるイセエビの稚エビを誕生させ一般に展示公開をしています。三重県科学技術センター水産研究部では10年以上前に人工飼育に成功していますが、飼育が難しく採算レベルに見合うような大量飼育ができないため、いまだイセエビの養殖は行われておりません。
フィロソーマ。卵からふ化して約1年間、この姿で脱皮を繰り返しながら海中を漂います。(写真上)
フィロソーマの次はガラスエビとも呼ばれるプエルルスになります。(写真下)
(写真提供:鳥羽水族館)
イセエビは成体になってからも脱皮を繰り返します。目やヒゲなどきれいに脱皮するのはもちろん、内臓の表皮部分まできれいに脱皮します。
(鳥羽水族館)
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