黒潮洗う豊かな海域
イセエビの漁期は主に冬場です。寒風の吹きすさぶ海の上で網を上げるのはとても厳しい作業です。前後左右に揺れる小舟の中では、防寒服で厚着になり過ぎても機敏な身動きがしにくくなって危険です。寒さで手も凍えてきます。
それでも海の中では多くの生命が生きています。伊勢湾の入り口に当たる伊勢志摩の海には豊富な魚介類がいます。フエダイ、ユカタハタ、コブダイ、アカハタ、コショウダイ、モヨウフグ、ハリセンボン、マダイ、スズキ、カンパチ・・・・・・、そしてイセエビやそのエサとなるウニやカニ、貝類などです。伊勢志摩の海の沖には黒潮が流れ、その一方で伊勢湾から流れ出る海水と交わります。伊勢湾の最奥部には木曽三川と呼ばれる揖斐川、長良川、木曽川の3本の大河が流れ込み、適度な栄養分を上流から運んできます。栄養分は海藻やプランクトンを育て、それを貝や小魚などがエサとして育ち、さらにそれらをエサにする大型の魚たちが育ちます。
刺網で獲れたイセエビなどを一旦港へ持ち帰り、再び漁船を出して定置網の張ってある場所へと出かけます。既に日は昇っているので、早朝ほどの寒さは感じられません。
定置網でもいろいろな種類の魚介類がかかっています。時にはイセエビがかかることもあるそうです。
海の中で起きている変化
イセエビ漁も年によって、豊漁や不漁の時があります。水温が低い年はあまり獲れないという声も聞こえます。イセエビやその仲間は、南方系の生き物です。生息している場所は水深が3m~20mくらいの範囲です。水温も20℃前後が適しているようです。太平洋側に生息していますが、日本海側にはいないのは水温との関係もあるようです。
イセエビは全て天然物ばかりで養殖ものはありません。当然、資源としてのイセエビを守ることが大切です。そのためには、第一に乱獲を防ぐことです。もちろん、乱獲の結果がどうなるのかを一番良く知っているのは漁師たちです。
イセエビが獲れない年があるといっても、漁場によって収穫量に大きな違いがあります。例えば前年にたくさん獲れた場所に刺網をかけても、翌年には獲れないということがあるそうです。理由はイセエビのすむ岩礁の隙間が土砂などで埋まることがあるからだそうです。陸地のような開発が行われない海底も、潮の流れや陸地側から流れ込む土砂などによって変化をしています。海岸線の浸食を防ぐため沖合に消波ブロックを投入することがあります。消波ブロックのように隙間がいっぱいあるところは、イセエビにとって格好のすみかとなります。陸地だけでなく海岸線などの改変も、海の中では様々な変化を起こしているようです。
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