水の話
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食品から水処理技術まで活躍する微生物

気候風土で培われてきた各地の漬物
 北海道から沖縄まで、日本各地にそれぞれ特徴のある漬物があります。北海道にはカズノコやニシン、コンブといった海の幸を使った松前漬けがあり、沖縄にはパパイヤ漬けがあります。
漬物の産地といえば東北や北陸、信州、飛騨などが有名です。理由の一つが冬場に野菜が不足するからです。そしてもう一つの理由が気温です。おいしい漬物をつくるには上手に発酵させることです。このとき、低温で時間をかけて発酵させた方がおいしく仕上がります。乳酸菌は低温の方が活発に活動しやすく、温度が高くなると、腐敗菌の動きが活発になり、腐敗する可能性が高くなってしまいます。もちろん塩を大量に使えば腐敗を防ぐことはできますが、素材の味を損なうことになってしまいます。四国の瀬戸内海に面している地域には名産の漬物が少ないと言われているのは、温暖な気候が漬物づくりにあまり適していないからです。



古くから漬物材料にされてきたカブ
 寒い地方での名産の漬物の一つに飛騨地方(岐阜県)の赤カブ漬があります。カブは日本で最も古くからの栽培野菜の一つで、春の七草では「スズナ」と呼ばれています。アブラナ科の植物でハクサイ、コマツナなどの仲間です。アブラナ科の野菜の種類は多く、古くから漬物の材料として利用されてきました。日本書紀には持統天皇が五穀を補うために奨励したとの記述があり、主食の代用として重要な食材にもなっていました。
アブラナ科の野菜で有名なものとして京都の水菜、長野の野沢菜などがありますが、こうしたアブラナ科の仲間を漬け菜と呼び、その中で根が肥大するものがカブです。カブは仲間同士の交雑が容易なため、昔から品種改良が進み、いまでは約80種の品種がつくられています。京都の千枚漬けに使われる聖護院カブのように大きくなるものもあれば、滋賀県の日野菜カブのように細長くなるものもあります。

赤カブ
カブは古くから栽培されてきた野菜だけあって、多くの品種があります。その中で根が赤いものを赤カブと呼んでいます。


貴重な塩を使わないすんき漬
 飛騨地方で赤カブ漬に使われる赤カブは1種類だけではありません。高山市を中心に栽培されているのが飛騨赤カブで形は扁平しています。飛騨の南部で栽培されているのは開田カブで濃い赤色をしています。岐阜県郡上市では古くから栽培されているのが石徹白(いとしろ)カブで色はピンクをしています。いずれのカブも400年程の歴史があるようです。
ところで、同じような山国でも長野県の木曽地方では古くからすんき漬という漬物があります。材料としてカブの茎や葉が使われていますが、最大の特徴は塩を使わずに乳酸発酵させることです。すんき漬に使う乳酸菌は決して珍しい菌ではありませんが、木曽のような寒い地方の方が繁殖しやすいとされています。熱湯消毒した桶に、湯通しした菜とヤマブドウやヤマナシなどの実の汁を発酵させてつくった乳酸菌をいれ、重石を乗せて密封します。
木曽ですんき漬がつくられるようになったのは塩が貴重品であったからだと考えられます。ところが木曽と同じように山に囲まれている飛騨高山では塩を使った赤カブ漬が有名です。

すんき漬
塩を一切使わずに発酵させる長野県の木曽地方に伝わるすんき漬。湯通ししたカブの茎菜を桶に入れ、乾燥保存などしたすんきを入れると3日程で発酵し、鼈甲色をしたすんき漬ができあがります。


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