フジクリーン工業株式会社
水の話 サケの遡上part1
いまだ謎の多いサケの生態

最後の旅
 曇りで満潮のときには河口へ集まり川を遡る、と北海道標津町の漁師さんが教えてくれました。そしてエサをとらず、体内に蓄えられたエネルギーだけで、遡上します。
 サケにとって、一生のうちでもっともドラマチックな旅のはじまりといえるかもしれません。浅瀬では、尾ビレ、背ビレが完全に水面上に出ています。わずかでも流れがあれば流れに向かって、必死になって泳いでいます。しかし、泳ぐというよりは、跳びはねる、といった方がふさわしい光景です。中には、跳びはねた勢いで岩の上や水のない河原の上へと行ってしまうものもいます。それでも、上流へと向かおうとします。うろこははげ、傷だらけになっているものもたくさんいます。すでに産卵を終え、ぐったりとして下流へ流されていくものもいます。カラスやカモメが、そうしたサケを狙っています。そして彼らのエサとなってしまったサケが数え切れないほど横たわっています。
 やがて、産卵に適した地を見つけます。川底が砂利で湧水があり、水深は10~30cmが条件になっています。ここにメスが直径1m、深さ20~30cmの穴を掘ります。1時間ほどかけて作ったこの産卵床で、メスとオスが産卵、放精を行います。産卵は約10秒、そして産卵が終わると、メスは産卵床の上に砂利をかけます。これは外敵から卵を守るのと同時に、紫外線からも守るためだといわれています。メスはこうした1回の産卵を終えると、そのまま死んでしまうと思われていますが、実はこうした産卵を場所を変えて数回行い、最後の産卵床を1週間ほど保護してから、死んでいくのです。オスも1回目の放精のあと、別のメスのところへ行き放精をします。やがて命尽きたサケはホッチャレと呼ばれています。

新しい生命、再び
 産卵床に生みつけられた卵は8℃ほどの水温なら約2か月でふ化します。このとき、「卵黄のう」という姿をつけたままふ化し、この袋に入った栄養だけで、さらに2か月ほどを砂利の中で、じっとして成長します。砂利の中から出てきたサケの稚魚はユスリカなどの水生昆虫をエサにして、急流に逆らって泳いだり流されたりしながら、徐々に河口へと向かうのです。そして本州の川で生まれたサケも北海道で生まれたサケも、北海道沿岸に沿って移動して、オホーツクの海からさらに北の海へと向かって、旅出っていくのです。


サケの産卵

サケの誕生

サケの赤ちゃん

サケの稚魚
砂利を掘って作られた産室に生みつけられた卵は、水温8℃なら2か月でふ化します。おなかについている卵黄のうがなくなると、自分でユスリカなどの水生昆虫を食べ、4月から6月にかけて海へ下ります。
(写真提供:標津サーモン科学館)


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