しかし、ふ化事業が始まってからも、長い試行錯誤の時代が続きます。ふ化に成功し、放流してもサケが増えないのです。こうした状況が、昭和45年頃まで続いたのです。サケが増えたということは、北の海から生まれた川を目指して帰ってくるサケが増えたということです。ただし、増えたといっても、放流する稚魚を増やしただけではありません。帰ってくるサケの割合(回帰率)も大きく伸びたからです。
自然の状態で、個体数を維持し続けていくには、2尾の親から生まれた卵の数に関係なく2尾が成長して再び産卵できるようになればいいはずです。サケのメスは約3000個の卵をもっています。このうち2尾が成長して親となればいいわけですから、その確率は0.067%です。ただし、遡上の途中で産卵する前に息絶えるものもいますから、実際には0.1~0.2%くらいが、戻ってくることになります。ところが、現在北海道で行われているふ化放流事業によるサケの回帰率は平均で4~5%となっているのです。自然の回帰率の数10倍ということです。
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産卵場所を求めて忠類川をのぼるサケ。かつては、遡上するサケの群れで、川面が真っ黒になったこともあったといわれています。 |