ポー川と伊茶仁川との合流地点にサケ捕獲場はつくられています。ポー川には堰が設けられ、遡上してきたサケは伊茶仁川の方へと入ります。ところが伊茶仁川にも「水門」があり、サケが入ると「水門」は閉じられます。しかも、その上流にはサクが設けられ、川の一部がいわばプールのようになっているのです。この「プール」の中にサケを集め、網ですくい取り、上流にあるふ化場まで運ぶのです。ただし、すべてのサケを運ぶのではないようです。網の中のサケを選び分けています。
「メスは全部採卵場までもっていきますが、オスはそんなに要りません。メス10匹に対しオス3~4匹もあれば十分です。ただし、精子が死んでいる場合があるので、2匹以上のオスの精子をかけるんです。」
水の中で勢いよく跳ねるサケを捕らえるのは、なかなか大変な仕事のようです。胴長グツをはいているとはいえ、体はかなり濡れてしまいそうです。捕獲場の仕事は5月頃から始まり、12月頃まで続きます。最初に捕獲するのは、サクラマス、次にカラフトマスが遡上して、それからサケという順です。しかし、最近はカラフトマスとサケの遡上の時期が重なってきたとのことです。サケの遡上時期が少し早くなってきた、ということらしいのです。昔は正月を過ぎてもサケの捕獲をすることもあったそうですが、いまはそうしたことはありません。
10月に入れば、すでに肌寒さも感じられる道東地方です。冬場の捕獲作業はかなり厳しいものと思われます。
「胴長をつけているからといっても、そりゃ寒いですよ。だけど、そうした寒さはある程度我慢できるんですが、手がかじかんでいうことをきかんくなる方が困ったですよ。」
しかし、実際の作業では、もっと大変だったのが大雨の降ったときです。
「堰のところに上流から木の枝や葉などのゴミがつまり、そのまんまにしとくと、決壊しちまうことがあるんです。それで堰にロープをかけて補強したり、たまったゴミを取ったりしなければなりません。」
夜通し、寝ずの番をしたことも、たびたびはあったようです。ある大雨の時、他の多くの捕獲場の堰などが流されたり壊れたときに、大菅さんの管理する伊茶仁の捕獲場だけは無事だった、ということもあったようです。
捕獲場を守る仕事はまだあります。伊茶仁川は小さな川で、河口の幅も広くありません。そのため、砂で河口がふさがれてしまうこともあるのです。当然、サケは遡上できなくなってしまいます。こうした川の管理も大菅さんの仕事の一つだったのです。 |
伊茶仁とは、サケが産卵のために掘った穴がたくさんあるところを意味するアイヌ語です。かつては多くのサケが伊茶仁で自然の産卵をしていたのでしょう。
柵の中へ入ったサケを、網の中へ入れて捕獲します。胴長グツをはいているとはいえ、寒い日の作業は大変です。
伊茶仁川に設けられた柵。大雨のとき、ここに木の枝や葉がたまると水圧を受けて壊れることがあるため、夜通し番をしたこともありました。
捕獲場でとったサケは、トラックに積まれて、上流にある産卵、ふ化場へと運ばれます。
伊茶仁川の上流にあるふ化場。ふ化した稚魚をすぐに放流するのではなく、ここである程度成育させてから放流します。
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