フジクリーン工業株式会社
水の話 サケの遡上part1
水と生きる
北の海から元気な姿で戻って来い

漁師としての魂
 大菅さんのことを、皆は船頭と呼んでいます。捕獲作業の現場責任者のことを、こう呼ぶのだそうです。平成3年に、惜しまれながらも船頭の職を辞しました。「もう歳だから」というのが理由です。でも、捕獲場と自宅とは目と鼻の先。サケの様子がいつも気になるようです。
「自分が捕らえたサケから生まれた子が3〜4年すれば戻ってくるわけでしょ。今年はどれだけ戻ってくるのかって、いつも期待しとったね。ところが最近は、サケもずい分と安くなっちまってね、買う方にとっていいことだけど、漁をする側には、必ずしも喜ばしいことじゃないね、定置網の経営も、結構苦しいらしいですよ。」
 要は需要と供給とのバランスです。日本の食生活の変化で、魚ばなれということが言われだしてから久しくなります。その一方で、健康食としての魚の価値も見直されつつあるようです。
 数年前、大菅さんは漁船を新しく作りかえました。その船は、赤い実のついたハマナスにおおわれて、浜の上で静かに横たわっていました。作っただけで、まだ一度も漁に使ったことがないと言うのです。これからも、使うことはないだろうと大菅さんは語ります。船は漁をするためだけのものではないのです。北の海で魚たちと共に生きてきた男の存在の証なのです。サケ漁は、いまが最盛期。まもなく早い冬が訪れます。小雪のちらつく中で、サケの捕獲作業が、今年も行われることでしょう。

大菅さんのお父さんの手造りのカンテラ。懐中電灯のない時代は、この中にロウソクを入れて、夜の海に出かけました。


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