水の話
 
炭と日本の文化

現代科学と同じ原理で作られていた備長炭
炭焼窯 備長炭は、高級な炭の代表ともいえる白炭ですが、白いといっても炭の表面に灰がまぶさって白っぽく見えるということで、炭そのものが白いわけではありません。非常に堅く、たたくと金属的な音を発します。しかし、白炭と黒炭は、たんなる外観が異なるだけではありません。一番大きな違いは炭焼の工程です。その結果、炭の性質にも大きな違いが現われてきます。

炭に焼く木には様々なものが使われます。その木を適当な長さに切り揃え、炭焼窯の中に並べます。そして、窯の焚口で木を燃やします。やがて、窯の中の温度は上昇していき、木が熱分解を始めます。ここで焚口で火を燃やすのを止めます。後は、窯の中へ送り込む空気の量を煙の色や匂いなどで判断しながら調整します。こうした作業を4~5日続け、窯の中全体の木が熱分解した頃を見計らい、焼き上がる寸前に、窯の中へ空気を送り込み、温度を上げてやります。これを「ねらし」といって炭焼の中でももっとも難しい工程とされています。空気の量が多すぎれば、炭にならずに燃えてしまいます。少なすぎれば、炭にはならないからです。

こうした一連の作業は黒炭も白炭も基本的には同じです。ただ、最後に窯の中で燃えている炭を消すとき、黒炭は窯を密閉し、冷えてから炭を取り出します。それに対して、白炭は炭を窯の外に引き出し、消粉という土と灰が混ざったものをかぶせて消火します。そのため、表面に白い灰がついて白い炭に見えるのです。ところが、黒炭と白炭は消し方の違いだけでなく、窯の中で熱分解されるときの温度も違っているのです。黒炭が炭化される温度は300~400度とされています。「ねらし」のときの温度が800度位です。それに対し、白炭は炭化温度が200~300度と黒炭よりも少し低めで行われますが、「ねらし」の温度を1,000度にするのです。とくに備長炭は他の白炭よりも低い温度で炭化を行い、「ねらし」で一気に高温にします。この温度調整に備長炭の大きな特徴があるのです。私たちの身のまわりには、ゴルフクラブや釣竿など、炭素繊維で作られたものがたくさんあります。そして実は、備長炭の作り方は、20世紀になってから発明されたこの炭素繊維の作り方と非常によく似ているのです。

ねらし 備長炭 十分に炭化の済んだ備長炭は最後の「ねらし」で一気に1,000度以上の高温にして、窯の外へかき出され、「消粉」をかけて消火されます。こうして出来た備長炭は原木に比べ、長さは4分の3、重さは8分の1、直径は3分の1にまで小さくなります。


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