水の話
 
炭焼が山を耕す

炭焼窯に集まってくる小鳥
炭焼小屋 炭焼というと、窯で木を焼く作業が思い起こされます。しかし、原木の切り出しのほうが、労働としてはむしろ大変な作業です。そして、その作業が山を常に守ることになっていたのです。

和歌山県南部川村清川地区。戸数300戸ほどの村ですが、戦前はほとんどの家で炭焼を行っていました。この地区だけでは炭に焼く木が足りないため、遠く九州や四国の山の中にまで原木を求めて出かけていました。それが戦後の燃料革命によって、炭焼をする人は急減しました。いまも炭を焼く人の中には、祖父の代から3代にわたり炭焼を続けてきた人たちがたくさんいます。

「炭焼小屋の回りには、小鳥がよく集まって来るんです」。長年にわたり炭を焼いてきた人から聞きました。炭焼小屋の回りには、えさとなる虫が増えるということです。土が豊かであれば、土の中の生き物たちも、また豊かです。彼等は落ち葉を分解して土に戻し、山に降った雨が一度に流れ出さないようにしてくれます。雨は樹木と小さな生き物たちが作り出す養分をたっぷりと取り入れて、地下へと浸み込んでいくのです。そんな山を何百年にもわたり、炭焼という仕事が守り続けていたのです。


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