この木酢液の効用が最近になって、注目されています。たとえば、養豚場や養鶏場で糞尿に振りかけることによって臭いを取るのに使われたり、有機農業を行うときの土壌改良剤として畑にまかれるなどしています。ブームとなっているガーデニングでも、植物の生育によく、虫がつきにくくなるといって紹介されています。また、風呂に入れると、肌がすべすべとなり、温泉のような効果があるとされています。しかも、水虫やアトピー性皮膚炎にも効果があり、カミソリ負けもしないといわれています。酢酸が主成分ということは、酢と同じようなものですから、消毒作用があるということで、水虫に効果があるというのもうなずけます。
ヨーロッパでは17世紀ごろから、木酢液を酢酸メタノールなどの製造に利用していたようです。日本でも、日露戦争(明治37~38年)のころには、木酢液に石灰を混ぜ、これから火薬の原料になるアセトンが作られていました。
紀州備長炭の産地・和歌山県南部川村は、梅の産地としても有名です。以前、梅畑の近くに炭焼窯を作ったとき、畑の所有者が、煙で梅がダメになるのではと心配をしました。ところが、実際には煙のかかった畑の梅は、他の畑よりいい実がたくさん収穫できたというのです。
木酢液のpHは2.3もの強い酸性です。そのもととなる煙がかかれば、酸性雨と同じような被害が出るのではと思われます。確かに、木酢液を原液のまま植物に与えれば、根はダメージを受け、枯れてしまいます。ただ、酸性雨被害の元となる酸は硫酸や硝酸などの強酸です。それに対して酢酸は弱酸といわれるもので、酸としての性質が異なります。しかも、通常は数百倍から1千倍ほどに薄めて使われるため、酸が根にダメージを与えることはなく、むしろ殺菌作用の方が働くのです。それにしても、殺菌作用だけで植物の生育を良くしている訳ではありません。木酢液の何が植物の生育を助けているのかは、正確にはまだ解明されてはいないようです。
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木酢液の作り方は意外と簡単です。炭焼小屋から出てくる煙を長い煙突に通せば、自然に冷えて液体となって回収できるのです。ただし、そのままではタール分がたくさん含まれているため、回収した液を1ヵ月ほどかけ、タール分を沈殿させます。さらにろ紙などで濾すと茶色くて透明な木酢液になります。
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炭焼窯の中に並べられた原木。この木が熱分解するときにさまざまな木の成分が煙となって排出されますが、木酢液としてそれを再び回収します。
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木酢液がとれるのは窯から出てくる煙が白い色のときです。黒い液状のものが木酢液です。
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木酢液。風呂(200リットル)に入れる場合は5ccほどで十分です。
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