フジクリーン工業株式会社
水の話 藍染めpart1
染料の歴史と色の意味

身近にもある染料の原料
 合成染料の発明とその後の発達は、色彩の世界を大きく変えていきます。より鮮やかで華やかな色を作り出すとともに、染色技術もさらに発展させていきます。ところが、合成染料の方が天然染料よりも優れているかといえば、そうばかりとはいえません。たとえば絞り染をするとき、合成染料の色素の分子は天然藍の分子よりも細かいため、手で縫い絞っただけでは染料が浸透してしまい、かえって模様がぼけてしまう場合があります。また、合成染料に比べ、多少色はくすんでいても、天然染料の色の方が落ち着くという人もいます。あるいは花や葉など、そのままの色で布を染めてみたいという人もいます。

伝統的な染料の材料は、ほとんどが漢方薬として使われているものです。しかし、植物の大半は草木染の材料となるため、最近はラベンダーや野菜、果物なども使われています。
 伝統的に使われてきた天然染料の多くは、簡単に手に入りにくいものがたくさんありますが、身のまわりにある植物は、ほとんどが天然染料として使えるものばかりです。たとえば台所にある野菜も果物も、染料の材料として使えるのです。玉ネギの皮などもそのまま捨てるのではなく、陰干しにしてとっておき、必要なときに染料を抽出することが可能です。ただし、色によって色素の抽出や染色の方法が異なります。

 色素の抽出方法は、材料を細かく砕き、水に浸けるか煮沸します。それでだめなら水を煮沸したところへ酢酸かアルカリなどを加えます。ほとんどの材料はこうした方法のいずれかで色素を抽出できます。そして抽出方法に応じた染色方法を選ぶのです。


ザクロ

ヤマモモ

ラベンダー

アカネ

水にこそ染料の生命
 染色には糸の段階で染めてから布などに織る先染めと、織ってから染める後染めがあり、さらに染色したいものをそのまま染液にひたして染める浸染(しんせん)、布地に印刷するようにして模様をつける捺染(なせん)(プリント)などの染色方法があります。
 捺染の場合、布地に染料だけで直接模様を描けば、当然にじんでしまいます。そこで染料を糊状のものと混ぜ、それで模様などを描いて、あとから水洗いをして糊を取り除きます。
 ところで、染色には水を必要としますが、どんな水を使ってもいいということではありません。というのも、硬水にはさまざまな金属イオンが含まれています。もともと染液につけただけでは十分に染まらないときには媒染という方法がとられています。つまり、水の中に含まれる金属イオンが媒染と同じ役目をもって、本来の色とは異なる色に染めてしまうこともあるのです。そこで染色には軟水が使われます。また、草木染をした場合、天然染料はそのまま捨てると水を汚すことにもなるため、不要になった染液は、別の容器に入れて放置しておきます。そうすると表面にカビが生じ、色素は自然に分解されます。そこで染液を濾紙で漉せば、濾液はそのまま捨て、残りクズは燃えるゴミとして捨てることができます。自然の風合を楽しめる草木染愛好者は、やはり最後まで自然に対して優しくありたいと願っています。


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