フジクリーン工業株式会社
水の話 藍染めpart1
水と生きる
「神の宿る色」を甦えらせる

本物へのこだわりは思いやりのこころ
 本物の藍染の復活に賭ける古庄さんに、人は「そんな儲からんことをやってメシが食えるのか 」と問いかけました。

「ああ、メシが食えん。だから毎朝パンを食べている」と呵呵大笑してきたそうです。

「科学万能の世の中にあっても、鍼灸のように何千年も続けられ、効果をあげている治療法があります。同じように何百年、何千年と生き続けているものは沢山あります。ならば日本でも1000年以上も続いてきた藍染も生きていかなければウソだと思います」

 自らの生活が苦境にさらされようと、あくまでも本物の藍染にこだわり続けてきた古庄さん。

「こうまでして本物にこだわり続けようとするのは、バカでなければできないことかもしれません。ても、バカでええじゃないですか。世の中、一人くらいバカがいてもいいじゃないですか」




古庄理一郎さんの作品
「空と海」と名付けられた訪問着
(古庄理一郎傘寿記念作品集より)
 藍は洗えば洗うほど、美しく深みのある色になっていくといわれています。

「藍は虫を寄せつけず、保温作用、消臭作用もあり、垢もつきにくい。これほどすばらしい染料はほかにはありません。しかも洗えば洗うほど他の不純物が取り除かれ、純粋な藍だけが残るために美しくなっていくのです」

 徳島が藍の一大生産地となったのは吉野川のおかげです。藍の生産量が、昔に比べ大きく減少したとはいえ、本物の藍染にこだわり続けてきた人がいます。

「私もたしかに苦労してきましたが、すくもづくりも実に大変な作業です。いいすくもを作ってくれる人、染料作りに欠かせない良質の木灰を提供してくれる人、そうした方たちのおかげで藍染がはじめて可能になるのです」

 古庄さんの作品は、藍を通じて引き合わせてくれた人やモノへの感動から生まれ出たものです。他者に対する思い遣り、労りの心、価値を見つけ出す心。本物へのこだわりの原動力は、実はそんなところにあるのかもしれません。


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