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アユといえば、川魚、つまり淡水魚を代表する魚の一つに数えられています。でも、ふ化した仔魚は秋に海へ下り、翌年の春までを海で過ごします。このほかにも、海と川を行き来する魚はたくさんいます。淡水魚とは、一体どういう魚なのでしょう。 |
海の魚と川の魚 |
川や湖などにすむ魚は淡水魚、海にすんでいる魚は海水魚、と思われています。たしかに山奥の渓流にすんでいるイワナを海で釣ったとか、サンマやイワシを川でとる、という話しは聞いたことがありません。
淡水と海水の違いは何かといえば、基本的には塩分濃度の差ということです。その中で生物が生きていくには、浸透圧による体内の水分調整が大きな問題となってきます。たとえば淡水の中で生活している魚を海水の中へ入れると、体内の水分が細胞膜を通って海水の方へ移動してしまい、魚は生きていけません。逆に海にすんでいる魚を淡水の中へ入れると、淡水が塩分濃度の濃い魚の体内へ入っていくため、魚の体は膨脹してしまい、やはり死んでしまいます。
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ところが、アユやサケのように川から海、海から川へと生活の場を移し変える魚は、それぞれの水域へ入る前に、海水や淡水の中でも平気でいられるよう、体の浸透圧を調整する能力を持っています。
一方、海水といっても、河口近くの水は淡水と海水とが入り混じっているため、塩分濃度はそれほど高くはありません。いわば、塩分濃度の低い場所で、汽水域と呼ばれています。魚の中には、この汽水域を主な生活の場にしているものもいます。
淡水魚とはいっても、このような汽水域、海水域と淡水域、全くの淡水域だけにすむものなどいろいろな魚がいるのです。そこで、淡水魚は、一般に3通りに分類されています。
1つ目が一次淡水魚でコイ、フナ、ナマズなど、一生を淡水中でのみ生活します。2つ目が周縁性淡水魚で、必ずしも淡水域にすむ必要がないのに、外敵に追われたり、エサを探すなど何らかの理由で淡水域に入り込むことのできる魚です。カワガレイ、マハゼ、クロダイ、ボラ、スズキなどがいます。もう1つが二次淡水魚で、生活史の一時期に海と川と往復する魚です。これには3つのパターンがあり、サケのように産卵のために川へ入ってくる遡河回遊魚、逆に産卵のために海へ下る降河回遊魚、そして産卵とは関係なく成長の時期を川で過ごす両側(りょうそく)回遊魚です。両側回遊魚の代表がアユです。
日本には海の魚も含め約4000種の魚がいるといわれていますが、このうち淡水にのみ生息する、一次淡水魚は150〜180種だといわれています。
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