フジクリーン工業株式会社
水の話 淡水にすむ魚part1
琵琶湖のエリ漁

 琵琶湖では、古くから独特のエリという漁法が伝えられています。いわば定置網の一種で上空から眺めると、ちょっと矢印のような形をしています。滋賀県今津町は、琵琶湖の北側に位置しています。この町に生まれ、子供の頃から魚取りが得意だった西井孝夫さんは、兄の淳一さんら仲間5人で、エリ漁を行っています。
エリ漁師
西井孝夫さん
昭和24年2月20日生まれ。地元の学校を卒業後、4年ほど左官の見習いをして独立、しかし、腰を痛めて廃業。送電工事の仕事をこなしながら、漁師に転向。エリ漁のほか、追いさで漁、沖すくい漁なども行っています。

琵琶湖にはいなかったはずの魚が増加
 朝7時前、港に5人の男たちが集まります。港といっても、ここは湖につくられている港です。エンジンをつけた船が無動力の船2隻を引っぱっり、エリのある場所へと向かいます。
 エリというのは、琵琶湖独特の漁法です。魚は障害物に突き当たると、それに沿って泳ぐという習性をもっています。そこで、湖の中に壁のようにまっすぐになった簀(す)を立てます。もっとも、現在では簀の代わりに網が使われています。「壁」をたどると、ちょっど矢印の先のような形となり、最終的には「つぼ」と呼ばれる部分に魚は入り込んでいきます。

「天候などの都合にもよるけど、普通は毎日魚をあげにいきます」。つぼは1度入りこんだら出られないようにはなっていません。あくまでも魚の習性を利用して、つぼのところに集まるようになっているだけです。「漁のない日にエリを見にいくと、結構、魚は逃げだしていますよ」。つまり、構造的には出入り自由となっているのです。

早朝のエリ漁。かつては竹簀でつくられていたエリも、いまでは落とし網が使われています。
 つぼのところへ着くと、3隻の船で取り囲み、網を上の方へ引き上げていきます。しばらくすると網の中に小さな魚がいっぱいいるのが分かります。4〜5cmの仔アユでした。十分に引き上げたところで、タモですくいとっては船の水槽へと移します。よく見ると、仔アユに比べるとかなり大きな魚が混じっています。「ワカサギだよ。去年はもっと多かったね。5〜6年前まで、エリの中にワカサギが入っとることなどまずなかったね。もともと琵琶湖にはおらんかった魚だからね。昔、食料増産ということで放流したことがあるというけど、うまくいかんかったと聞いています。それが、なんでか知らんが急に増えだしたんです」。

 エリに入るのは、ワカサギだけではありません。ブラックバスも、最近はよく入り込んでいます。


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