フジクリーン工業株式会社
水の話 淡水にすむ魚part1
淡水魚の生育する場所

魚のすめる条件
 魚にとって、生息していくために必要な条件とは何でしょう。塩分濃度も大切な要素ですが、それ以外にもエサ、水中の酸素量、汚れ、水温、産卵場所、pHなどさまざまな要素があるのです。
同じ川でも中央部と岸辺では水深、水温、エサ、水中酸素量などが異なってきます。
 では、魚のすみやすい川の条件とは一体どういうものでしょう、実は、なかなか難かしい問題なのです。たとえば、日本の河川や湖などのpHは、一般的にはpH7〜8の中性か弱アルカリです。ところが、アフリカのタンガニーカなどでは、pH8〜9の強アルカリ性、つまり石けん水並みの水をもつ湖も珍しくありません。しかも、魚たちはちゃんとすんでいます。日本でも、青森県の恐山にはpH4〜5という強酸性の湖があり、ここにウグイがすんでいます。

 水温についても同様です。北海道のカジカは水温15〜16℃でないと生活できませんが、南の方にいるハゼは20℃以下になると生活できなくなってしまいます。かと思えば水温が3℃〜30℃の間なら生活できる魚もいます。つまり、その魚が育った環境に適応してしまっているのです。

 ヤマメも、一般には水の冷たい美しい渓流にすむ魚として知られています。ところが北海道では、流れのない、コイやフナのすんでいるような下流域にヤマメがすんでいることがあります。上流域に比べれば有機物の量も増えています。ヤマメにとっては、水質の多少の変化より、水温の方がすむための大きな条件となっているのです。それと、水中にとけ込んでいる酸素の量です。つまり関東や中部以西の源流域に近い川の水温と北海道の下流域の水温とが同じぐらいだということです。しかも源流域ならば、有機物などによる汚れもないため、ヤマメはきれいな水にしかすめないと思われているのです。

川の上流、中流、下流の意味
 川や池、湖など、日本の多くの場所から、いろいろな魚が姿を消していきました。その理由をひと言でいうならば、生息環境の変化です。では、淡水域における生息環境にはどんなものがあるのでしょうか。もっとも重要なことが、産卵に適した場所の有無です。こうした場所が失われると、魚はやがて絶滅してしまうからです。次に、エサを取ったり外敵から身を守る場所の有無ということになってきます。

 こうしたことをもう少し詳しくみると、流れの有無や早さ、水深、川底の状態、水温などが考えられます。一方、自然の川は上流域から下流域まで、さまざまに変化します。ところで、川の上流、中流、下流は、どうやって区別するのでしょうか。単純に川全体の長さを3分の1ずつ区切っているわけではありません。

 自然のままの川というのは必ず蛇行しています。また、流れが早く水面が波立っている早瀬、流れは早くても水面が波立っていない平瀬、これら瀬と瀬との間に形成されている淵があります。早瀬は主に渓流に見られ、平瀬は中流で多くみられます。

 1つの蛇行区間内に、瀬と淵の組み合わせが複数出現するのを上流域、1つしか出現しない場所を中流域、ほとんど出現しない平坦な流れの区域を下流域といっています。ただし、海まで一気に流れ込んで、下流域を形成しない川や、湖などを源流とするため上流域の流れをつくらない川もあります。
自然の川は瀬と淵をもち、これらの関係から上流、中流、下流といった3つの形態に大きく分けられます。この形態の違いは生物の生育環境にも関係してきます。


上流

中流

下流
 上流、中流、下流というのは、たんに流れ方の変化だけではありません。当然、川床の様子、水量、水質、水温なども違ってきます。上流域は、山に囲まれているのが一般的で、水温が低く、山や木々によって日射量も多くはありません。水中をのぞいてみても分かるように、藻類など水中の植物もあまり成育していません。しかし、落下昆虫は結構います。そのため、上流域にはイワナ、ヤマメに代表されるように、動物食で、水温の低い区域を好む魚がすむことになります。

 中流域になると日射量も増え、水中には藻類も増えてきます。しかし落下昆虫は減ってきます。そこでアユやオイカワのように藻類を食べる魚を中心にウグイ、ヨシノボリなど多くの魚たちがすむようになります。

 さらに下流域へ行けば水温が高くなっていくため、より多くの生物がすめるようになります。魚の種類も当然増えてきます。生物がたくさんすんでいるということは、水中の有機物も増えることになり、上流部に比べれば水は汚れているということになってきます。

淵と瀬、それぞれの環境に適応した魚たち

同じ中流といっても、流れの速さ、水深、岸辺や川底などの状態に変化があり、魚たちはそれぞれの環境に適応して生活しています。


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