フジクリーン工業株式会社
水の話 淡水にすむ魚part1
琵琶湖にすむ魚たち

多様な環境が育てた豊富な魚種
 それにしても、1つの湖で55種もの魚がいて、そのうちの3割近くが固有種というのは驚くべき数字です。なぜ、琵琶湖には、このように多くの魚がすんでいるのでしょう。まず最初に考えられるのが広さです。それも面積が広いだけでなく、水深もあるということです。そのため、水温にかなりの開きがあり、温水系のコイやフナと冷水系のビワマスが1つの湖にすむことができるのです。それだけではありません。湖岸の総延長は235.2kmにも及び、岩場、砂浜、ヨシ帯など、さまざまな環境がつくられています。こうした変化に富んだ環境も、数多くの魚たちがすむのに適した場を与えているのです。

 また、琵琶湖には長い歴史があります。現在の形となってからでも50万年になるといわれていますが、それ以前の数百万年を加えれば、一つの生物が進化するのに十分な時間があったと考えられます。ただし、琵琶湖の固有種は、たんに生育環境の差によって生じた違いか、種を分かつほどの違いかは、まだ十分に解明されているとはいえません。実際、最近になって琵琶湖にはトウヨシノボリのほかに、別種と思われるヨシノボリがいて、これは琵琶湖の固有種ではないかとの説もでています。
魚の名前をクリックすると
説明がご覧いただけます。
●ビワヒガイ
●アブラヒガイ
●タナゴ類
●スゴモロコ
●ホンモロコ
●ムギツク
●ワタカ
●ソウギョ
●ハクレン
●ギンブナ
●ギギ
●オヤニラミ
●カムルチー
●ドンコ
●トウヨシノボリ
●オオクチバス
●ブルーギル
協力:滋賀県立琵琶湖博物館

琵琶湖のアユ
 琵琶湖といえば、なんといってもアユが有名です。湖産アユとして北海道から九州まで全国の川に放流されています。普通、アユはふ化したあとで川を下り、稚魚の時代を海で過ごします。しかし、琵琶湖のアユは海へ下りません。つまり陸封型のアユということです。では、川へ放流された湖産アユから生まれた仔アユは、海へ下るようになるのでしょうか。湖産アユはもともと小型です。しかし川へ放流されると普通のアユと同じように大きく成長します。ところが産卵時期が他のアユよりも早く、卵も小さく、たとえふ化して海へ下ったとしても生きられないというのです。琵琶湖のアユも、他のアユと同じように川を遡って成魚になるものと、産卵の時期以外は、ずっと湖で生活するものがいます。

琵琶湖のアユは日本全国に出荷され、川へ放流されたりして、釣り人を楽しませてくれます。
 川へ入ったアユは水中の岩についた藻類をエサとしますが、湖の中には藻類はあまりありません。そこでエサとなるのは、もっぱら動物性プランクトンです。

 ところで、琵琶湖のアユにも、最近はさまざまな変化が起きているようです。その中で問題となっていることの一つにワカサギの急増があります。ワカサギは、もともとは琵琶湖にすんでいなかった魚です。戦中、戦後に放流されたこともありますが、琵琶湖に定着しなかった魚です。つまり、ワカサギの生活には適した環境ではなかったのです。それがなぜ繁殖するようになったのでしょうか。アユを安定供給させる取り組みの結果、アユも増えましたが、アユとワカサギ両方のエサになる動物プランクトンの量も安定したからではないか、という説もあります。アユの産卵が秋であるのに対し、ワカサギは春、生活史がちょうど逆になっているため、ワカサギが生育できるようになったのではないかというのです。あるいは、水温や水質の変化、河川改修などにより、ワカサギの産卵しやすい場所が増えたためなど、いろいろな説も考えられています。ワカサギが成魚になったとき、アユの稚魚が誕生します。稚アユはワカサギのエサになってしまうこともあるのです。もう一つ困ったことに、稚アユをエリ漁などで捕獲するとき、ワカサギも同じ網に入ってきます。しかもワカサギは成魚となっているため体が大きく、同じ網の中にいる稚アユの体を傷つけてしまうこともあるのです。


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