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Topics 05-03
在宅透析と透析廃水について
在宅透析療法に高まる期待
腎臓は、血液中の老廃物をろ過し、尿を生成する機能を持つ重要な臓器の一つです。しかし近年、糖尿病や高血圧をはじめとした生活習慣病、メタボリックシンドロームなどを理由に、腎機能を低下させる人が増加しています。こうした症状を抱える患者の治療の一つに挙げられるのが、「透析」です。透析は、人工的に血液中の老廃物の浄化を行うため、一般的に週2〜3回専門病院へ通院し、1回4時間程度の治療を行う必要があります。さらにその時間的制約から、社会的活動(仕事)を縮小せざるを得なくなったり、保健上の医療費の増大など、患者への負担は少なくありません。国内の患者数は約35万人(※)にまで増加しており、大勢の患者の社会生活QOLに大きな影響を及ぼしています。
こうした状況の中、患者の負担を軽減する方法として注目を集めているのが、「在宅血液透析」です。在宅血液透析は条件を満たせば自ら行える腎代替療法で、自宅で行えることから時間の制約が少なく、治療時間を気にせずに透析を行えることが特長です。また治療の回数や時間を増やすことで食事制限が緩和され、合併症のリスクも減ると言われています。治療を続けながら普段通りの生活が送れるため、在宅血液透析の利用者は年々増え、2015年時点で572人に達しており、今後も増えていくことが予想されます。
※https://docs.jsdt.or.jp/overview/index.html
わが国の慢性透析療法の現況(2021 年 12 月 31 日現在)一般社団法人日本透析医学会 統計調査委員会より
日本透析医学界「慢性透析患者に関する基礎統計」より
人工透析廃水の問題点
患者にとって利点の多い在宅血液透析ですが、各家庭で導入するためには、人工透析治療による廃水処理の対策が必要となります。在宅血液透析廃水は、薬品洗浄剤が含まれ、BOD(生物化学的酸素要求量)値が600mg/Lと一般的な生活排水の約3倍です。そのため、そのまま公共用水域に放流すれば、環境負荷が懸念されます。さらにpH値は2〜3と強酸性のため、汚水桝や管きょを腐食してしまう可能性もあり、透析廃水処理装置の設置が求められます。
在宅血液透析排水処理槽に補助金60万円
国や自治体もさまざまな施策に乗り出しており、群馬県館林市では2016年2月に公示された「障がい者(児)等日常生活用具給付等実施要綱」の中で、新たに住宅療養等支援用具として「在宅血液透析排水処理槽」を追加しました。具体的には、在宅血液透析廃水を浄化する処理槽の購入補助として自己負担1割、上限額60万円を補助しています。このように、社会での理解と環境が整えられていくことで、治療に苦しむ多くの透析患者に「在宅血液透析」という選択肢を与えるとともに、QOL向上に期待が高まることでしょう。